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「コロナ除け」妖怪アマビエ その“正体”に直木賞作家・高橋克彦が迫ってみると……

「コロナ除け」妖怪アマビエ その“正体”に直木賞作家・高橋克彦が迫ってみると……

source : オール讀物

genre : エンタメ, 読書

note

驚きの仮説を大胆に検証すると……

――アマビエの正体としてUFO説が出てくるとは思いもよりませんでした(笑)。

高橋 人は未知の物に遭遇した時、必ず自分の身近にあるものでそれに名を付けます。そもそも空飛ぶ円盤はその通りの名称ではありませんか。つまり熊本の漁師たちは海から急浮上してきた乗り物から姿を見せた得体の知れない存在に、丸い稗にそっくりな乗り物で海から出現したことを重ねて「海稗」すなわちアマビエと名付けた、と睨んでおります。

 これはただのこじつけではなく、ほぼ同時期に関東の沖合に漂着した「うつろ舟」とその搭乗員の絵姿に基本的な類似性が窺えることからの連想です。

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――さらに高橋さんオリジナルの大胆な仮説も立てられたそうですが?

高橋 もう一つの私の大きな仮説ですが、それは世界最古の文明と言われるシュメール文明の創生期に海から出現して人々に言葉や知恵を授けたと伝えられるオアネス(oannes)と呼ばれる神の存在です。

 人間の形をしながら頭からつま先までびっしりと鱗で覆われた不思議な神。古い粘土板などにそのオアネスの姿が残されているのですが、眺めれば眺めるほどにアマビエと共通するものが感じられます(※図版参照)。両者とも海から出現した存在。人々の手助けをしようと願う心。その姿形。これらが単に偶然の一致と一蹴することはできないような気がしています。

コンラート・ゲスナーが16世紀に記した『動物誌』より
シュメーリ時代のものとされるレリーフ
世界遺産パサルガダエの半魚人のレリーフ