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「クオモ・ファミリー」というリアリティ・ショー

 この1カ月あまり、朝から晩まで「クオモ」という名字が全米のマスコミを席巻している。

 多くのアメリカ人は、朝はアンドリュー・クオモ知事の定例会見でニューヨークでの感染拡大の現状を知り、そして夜はCNNのニュース番組「クオモ・プライムタイム」で全米の最新状況を知る――クオモ知事の実弟、クリス・クオモ(49)はCNNの人気アンカーなのだ。

弟のクリス・クオモはCNNの人気アンカー ©︎AFLO

 ハンサムな弟のクリスは、新型コロナの問題が持ち上がるまで、男らしいが“男前”とまでは言い難い(?)兄に比べて、“ホットな方のクオモさん”と言われてきた。

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 そのクリスが4週間前にコロナウィルスに感染した。そして日本では考えられないことだが、クリスは自主隔離している自宅地下から連日放送を続け、自分の体の状態を伝え続けたのだ。

 クリスは「熱のための悪寒でがちがちと震え、歯が欠けた」などと、自分が体験している症状について、地下室から語る。クリスが番組を休んだ日には、全米の視聴者が気をもんだ。

 いまや朝は兄が記者会見で医療現場の窮状を語り、夜になると弟が、入院が必要とされない軽症でもどれほど大変なのか、その病気の実態について身体を張って伝えているのである。

 クオモ知事はクリスの感染後も、同番組にしばしば登場している。

 クオモ知事は、クリスを「私の小さな弟」と呼び、落ち着いた真っ直ぐな眼差しで、愛おしさを含んだなんとも辛そうな感情を隠しきれない。一方のクリスも、13歳年上の頼りになる兄に会った安心感のような、甘えた雰囲気を醸し出している。見ていると、私の方まで自分の弟を思い出し胸が痛くなるような2人の表情だ。

 アメリカでは回復後72時間熱が下がると、“コロナに打ち克った”とされるが、クリスは60時間で熱が再発した。その直後の放送で、クリスがクオモ知事に「ニューヨークの状況は?」と尋ねると、兄はその質問を遮って「まずお前の体からだ。どうした、調子が良くない顔しているな。シャツもだらしなく着ているし」と返した。

 クリスは、アンカーの立場から素の表情になり、下を向いてシャツの2つ目のボタンをしめて、一生懸命に引き締まった表情を作った。そして、「一番起きてほしくないことが起きた」と語りはじめ、クリスの妻が感染したことを明かした。

 クリスと妻は症状が全く異なるため、クリスに抗体ができていない可能性もあり、別々の場所で自己隔離していること、その間は長女が両親と自分たちの面倒を見ると語っていた。

 世界最大のリアリティ・ショーがイギリス王室だとすると、今やアメリカ最大のリアリティ・ショーは、クオモ家だ。

 2人の父親であるマリオ・クオモは元ニューヨーク州知事。さらに、兄・クオモ知事の最初の妻は先述の通りケネディ家出身。そういう意味で、クオモの家系は「民主党セレブ」といっても過言ではない。