11月3日の投票日まであと半年と迫った米大統領選挙。本来は選挙戦真っ只中の時期だが、いま国民の最大の関心事は当然ながら新型コロナウィルスだ。とりわけアメリカは現在のところ世界で最も悲惨な状態にある。
そんな中で、アメリカ政治の舞台に注目を一身に集める彗星が現れた。
アメリカ最大のホットスポットとなっているニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(62)である。毎朝開催されるクオモ知事の記者会見は、スライドやグラフを多用した「クオモ方式」と呼ばれ、いまや全米に影響を与えるまでになった。
クオモ知事の一挙手一投足は、大統領選挙の候補者のように注目を集め、民主党候補者としてジョー・バイデン前副大統領(77)の指名が確実となっている今でも、「クオモを民主党の大統領候補に」との声が相次いでいる。大統領選挙の動向を左右する最大のファクターが「アンドリュー・クオモ」だと言っても過言ではないのだ。
コロナウィルスで対決する「トランプVSクオモ」
アメリカにおけるコロナウィルスに関する政策論争も、トランプ大統領(73)とクオモ知事の応酬が中心にある。コロナ対策についても「人命第一」とするクオモ知事と、「経済」を動かすことに重きを置くトランプ大統領とのやりとりが、全米を動かしている。
トランプ大統領は本能的に「今の敵はクオモ」と判断したのだろう。いまではバイデンではなく、クオモ知事をアタックの対象にしている。「トランプ対クオモ」が前面に立っていて、「対バイデン」は鳴りを潜めている状態だ。
トランプの「大統領が全てを決める権限がある」というツイートに対して、クオモ知事が定例会見で「アメリカに王様はいない」と切り返して大きな話題となったこともあった。ちなみに、バイデンも「私はキングになるために大統領選挙を戦っているわけではない」と割って入ったが、コロナ対策の最前線にいる2人の戦いには参戦できず、蚊帳の外だった。
4月13日から15日にかけてNBCニュースなどが行った新型コロナウィルスに関する世論調査によると、「クオモ知事を信頼する」が46%、「信頼できない」が17%。一方、「トランプ大統領を信頼する」は36%にとどまり、「信頼できない」が52%。ちなみに、「バイデン氏を信頼する」26%、「信頼できない」29%、一番多かったのは「よくわからない」の45%だった。
バイデンは、トランプが「寝ぼけたジョー」とあだ名をつけるほど、少々退屈なキャラクターだ。オバマやクリントンのように、カリスマ性をもって熱狂を作るタイプではない。そのため、本人が参戦をいまのところ否定しているのに、クオモ知事の「民主党候補者待望論」が止まない。
トランプ対クオモ(バイデン)というのが、今の大統領選挙の構図である。