「これはダメだ」と思って彼女はLINEでのやりとりを打ち切ったそうです。
LINEだとメールよりもカジュアルに“会話”できます。ある程度の情報量の用件をまとめて、“お手紙”のようにやりとりするメールとは心理的な距離感が違います。LINEでのやりとりは基本的にカジュアルなものになりますから、よく知らないひとから馴れ馴れしい言葉をかけられても「そんなもんかな?」と感じてしまいやすい。「一線を越えた」と判断する基準が難しい。
だからこそ、LINEはリアルな世界でもともとよく知っているひと同士が使用するコミュニケーションツールだという認識を、大人も新たにする必要があるでしょう。あだ名で呼び合えるようなそれくらい近い関係のひと同士でないと、LINEの交換は危険だと私は思います。
会ったこともないひとから「友達申請」されたら?
フェイスブックのメッセンジャーやショートメッセージなども同様です。いわゆる「チャット」と呼ばれる形式で気軽におしゃべりができてしまうツールでは距離感を保ちづらい。家族、親戚、同級生、会社の同僚など、気心知れた相手とのコミュニケーションには便利ですが、仕事の取引先とのやりとりに使う道具ではないと私は思います。
こういうことを主張すると、「堅苦しい」とか「効率が悪い」とか「だから生産性が低いんだ」などという反論があるかもしれません。でもそれは、「自分はSNSがもつリスクを完全にコントロールできているから、メリットだけを享受できるのだ」と考えているからこそ成り立つ論理です。
社会がそれをスタンダードだとしてしまうと、「嫌だな」とか「ちょっと危険だな」とか感じていても、それを断りにくくなってしまいます。立場の弱いひとほどリスクにさらされやすくなります。
ついでに苦言を呈するならば、たとえばフェイスブックには「友達申請」という機能がありますが、あれはもともと「お友達になってください」という意味ではなくてリアルな友達同士をつなぐことを意図した機能です。しかし友達というほどでもない関係のひとや直接会ったこともないひとから友達申請が届いた経験は誰にでもあるでしょう。