ラブホテルと怪談は相性がよい。日本全国どの街にも、必ず1軒や2軒は「出る」と噂されるラブホテルがあるものだ。特に築年数の古い、年季の入った建物が、そうした噂の対象となりがちだ。
日本一の歓楽街・歌舞伎町はどうだろうか。
ラブホテル怪談にひそむ“ある事件”の影
もちろんこの街でも、いくつかのラブホテルに心霊の噂がささやかれているし、それらが古い施設ばかりという点では、他のエリアとさして変わらない。ただ、注目しておくべき特徴が一つ。
歌舞伎町におけるラブホテル怪談にはいつも、ある事件の影がつきまとっているのだ。
例えば、心霊ラブホテルとして有名だった「ホテルM」。現在は閉業しており、廃墟となった建物が歌舞伎町の片隅に取り残されている。黒ずんだビルの前に、ずっと解体工事の告知が張り出されているが、なぜかいまだに作業が進む気配はない。
ここは昔から、幽霊の噂がたてられるホテルではあった。「鏡張りの部屋にただよう空気が不気味だった」「ずっと不審な物音がしていた」「いきなり女性の叫び声が聞こえてきた」などの恐怖を伝える証言が、現在もネット上に転がっている。
とはいえこれは、単に建物の造りが古いため、板張りの床がきしんだり、隣室の嬌声が聞こえたり……といったことが原因のようだ。まあ、ここまでなら歌舞伎町界隈のラブホに出入りする人々だけの、ほほえましいローカル怪談に過ぎなかった。
しかし数年前、これら心霊の噂がにわかに注目される事態が起こった。2016年1月、ホテルMにて火災が発生、宿泊客である60代女性が死亡してしまったのだ。そしてわずか2日後、すぐ近くのラブホテルGも火災にて全焼。これによって「M」「G」両ホテルはともに営業停止、そのまま廃業してしまう。
その後も町内でさらに2件の不審火が続いた上、ゴールデン街でも大規模な放火騒ぎが起こった。これらの相次ぐ火難は、歌舞伎町にとどまらず全国ニュースでも報道された。