『週刊文春WOMAN』2020春号の発売を記念して、『週刊文春WOMAN』を代表する脳科学者の中野信子さんの人気連載「あなたのお悩み 脳が解決できるかも?」の一部を特別公開します。

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Q 不倫する女性は、たとえ有名人であってもなぜSNSで匂わせたくなるのでしょう?週刊文春WOMAN編集部からの質問

 隣の編集部(週刊文春)が報じた東出昌大さんと唐田えりかさんの不倫騒動は思った以上に反響が大きく、驚きました。

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 不倫の恋の是非は置いといて、限られた人ではあるにせよ複数の人に読ませることを前提としたSNSに恋の始まりから別れ話まで赤裸々に綴る、相手の妻の写真に「いいね!」を押す……。いったい何が不倫する女性をそんなタガが外れたとしか思えない行動に走らせるのでしょうか。

中野信子さん ©文藝春秋

A  倫理に反する行為であることを承知の上で、一種の公認の仲であると確認したかった 《中野信子からの回答》

 既婚男性と独身女性の組み合わせで不倫をしている女性は、「立場上は本妻に負けている」と感じているのが常でしょう。とはいえ、自分だってその既婚男性から「愛されている」「恩恵を受けている」と思いたい。けれど、なかなかその思いに味方してくれる人はいないし、自分1人で思い込んでいるだけでは心許ない。

 だから、そんな心細さを埋め合わせるために、せめて誰かに知ってもらってこの関係を気分の上だけででも補強したい、都合が悪くなれば無かったことにされてしまう、儚い間柄であることを認めたくない─といったところでしょうか。劣位にあるがゆえにこうした不安定な心理が働く、というのはごく自然に想像できます。

 とはいえ、秘密の関係をどんなに親しくはあっても第三者に知らしめるというのはリスクの高い行為です。なぜ、彼女は書きたい気持ちを止められなかったのか。

 2人の恋を既成事実化して、相手の妻に少しでも知らしめたい。本当に愛されているのは自分のほうだと本妻である女性からマウントを取りたい。そして、自分の親しい人との間だけででも共有して、倫理に反する行為であることを承知の上で、一種の公認の仲であると確認したかった。わからないではありません。たしかに、彼女も苦しかったのでしょう。

 ただ客観的に見てそれは気持ちのよいものとは言えず、「計算高い」という評価が出てくるのも仕方ないと思わせる何かがあった。

「週刊文春WOMAN」2020 春号