「見た目は清楚な感じの美人ですが、セクシーな表現力を持っている方でした。人を魅了するような歌い方や声質でしたね。普段の会話の端々からも説得力のあるハキハキとした話し方や声をしているので、そういったところが歌声にも反映されていました」
そう語るのは、1982年4月に発売されたジャズアルバム「YES, I FEEL」(POLYSTAR)の制作メンバーの一人で、B'zなどが所属する大手音楽制作会社「ビーイング」の元副社長を務め、BOØWYや氷室京介、LINDBERGなどを担当した音楽プロデューサーの月光恵亮氏(67)だ。
黒いワンピースでトランペットを抱えて
4月23日に新型コロナウイルスによる肺炎で惜しまれつつ亡くなった女優の岡江久美子さん(享年63)。ドラマ「天までとどけ」(TBS系)では母親役として、「はなまるマーケット」(同)では“朝の顔”としてお茶の間に親しまれていたが、清純派女優として人気のあった40年ほど前、ジャズ歌手としてデビューしていたことはあまり知られていない。
岡江さんのジャズアルバムを手掛けたメンバーの月光氏が、「文春オンライン」の取材にレコーディング当時の思い出を振り返った。
ジャズアルバム「YES, I FEEL」の表ジャケット写真には胸元が大きく開いた衣装の岡江さんの姿がある。裏面はトランペットを抱える黒のワンピース姿だ。このジャケット写真は、このアルバムと同じ年に発売された岡江さんのヌード写真集を担当したカメラマン、マイク岡田氏が撮影したものだ。
「岡江さんはジャズが本当に好きだった。やっぱりジャズは、好きでないと歌えないんです。アルバムでは岡江さんが好きなジャズシンガーの曲を選んでもらって、カバーしました。
曲だけではなく、写真へのこだわりも強かったです。ジャケットの撮影は、岡江さんと親交のあったマイク岡田さんが担当し、彼女もアートディレクターのように全部を仕切っていました。表情やライティングはテスト撮影の段階から『ここをもうちょっとこうした方がいいよね』『この角度はどうかしら?』などと、細かい指示を出していたのを覚えています」(月光氏)