國島高山市長は、これとは別に独自のメッセージも出している。ここでは医療資源が乏しく、感染者が出たら医療崩壊に直結しかねない地域事情を切々と訴えるなどした。そして、子や孫を帰省させなかった市民に対しても「ふるさと高山を出て都会の大学に通う子どもたちが、不安の中、都会で一人耐え忍ぶ姿を想像する時、本当につらく悲しい気持ちとなります。ふるさと飛騨高山は、高山で生まれ育った皆さんを誇りに思っていること、終息すれば、ふるさとはいつでも温かく迎え入れること、合わせてお伝えいただければ幸いです」と記した。
飛騨の人情深さが感じられる文面だ。
宮崎県日南市は特産品のマンゴーを活用
「帰省断念」への感謝の気持ちを特産品のお礼で示す自治体もある。宮崎県日南市だ。
「行かない、来ない、呼ばない宣言」を4月21日に行った崎田恭平市長は、4月29日~5月10日の間に帰省を断念し、航空機などをキャンセルした先着50人に、特産のマンゴー1キログラム分(時価4000~5000円相当)をプレゼントすると発表した。
「景気悪化の影響などからマンゴーの売れ行きが落ちています。そこでPRを含めて、帰れない分、故郷を味わってほしいと考えました」と担当職員は話す。
危機にこそ試される“首長の発信力”
千葉県勝浦市など房総半島の6市町村の首長が出した共同メッセージには誠実さが感じられる。
6市町村は太平洋に面していることからサーフィンに訪れる人が多い。しかし、高齢化が進み、医療資源も乏しいため、感染が拡大すると致命的な影響を受ける。そこで「苦渋の決断」で自治体所有の駐車場を閉鎖した経緯を説明した。
「新型コロナウイルス感染症の危機が去りました暁には、わたくしどもの地域をあげて、従来にも増す熱意で皆様をお迎えさせて頂くことをお約束いたします」として、その時には「お互いに大輪の笑顔で、再会を祝しあえるように」とメッセージに書き込んだ。
何を発信するか。危機にこそ試されるのかもしれない。その影響と結果は、収束後に明らかになるのだろう。