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「今は来ないで」岡山県は大炎上、島根県は絶賛……明暗を分けたのは“言い方”?

危機にこそ試される“首長の発信力”

2020/05/03

 新型コロナウイルスの感染対策で、全国の自治体が「今は来ないで」と訴えている。5月2日~6日のゴールデンウイーク期間中などに、帰省や旅行で人の出入りが激しくなれば、感染が広がる恐れがあるからだ。

 だが、ものは言いようだ。「来たら後悔させてやる」と言わんばかりの発言をした知事には抗議が殺到した。「会いたいからこそ、今は『会わない』ようにしませんか。それが収束を早める」と訴えた県には、「素敵なメッセージが心に響いた」と賛意が寄せられた。

4月29日の東京駅。祝日にもかかわらず、新幹線乗り場に人はほとんどいない ©AFLO

 いずれ感染症が収まれば、外出自粛で景気や社会活動が低迷した分、観光客や定住者の誘致が課題になるだろう。しかし「今の言動が地域のイメージを左右し、後になって明暗が分かれるのではないか」と指摘する声もある。

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岡山県庁には「2日間で50件程度の苦情」

「後悔」と口にしたのは、伊原木(いばらぎ)隆太・岡山県知事だ。山形県が来県者の検温を始めたのに触発され、岡山県でも「県外からの帰省者や旅行客の流入抑止に向けた啓発活動」として実施しようと考えた。高速道のパーキングエリアで4月29日、職員らが県外ナンバーの車に乗った人などの検温を行うと決めた。

 その内容を発表した4月24日の記者会見で、「いかに歓迎していないか、警戒しているかっていうことを、主に他県の皆さんにお伝えできる人数」に対して検温し、「声を掛けられた人が、『マズイところに来てしまったな』と、後悔をしていただくようなことになればいいなと思っています」などと述べた。

伊原木隆太・岡山県知事 ©時事通信社

 これが報道されると、県庁には抗議の電話やメールが相次いだ。「2日間で50件程度の苦情がありました。妨害してやる、危害を加えるというような内容もありました」と公聴広報課の職員は話す。

「職員が疲弊してしまう」

 結局、伊原木知事は検温を中止すると発表した。そして、「皆さんがビックリするぐらいの言葉を使わなければ、県外で配信してもらえないという思いで、わざと使った面もある。大変多くの方に不快な思いをさせてしまった」と釈明した。

「普段は強い言葉を使わない人です。命に関わる話なので、あえてきつい言い方をしたのだと思います。しかも、県外の人に対してだけでなく、岡山の人も県外に出て迷惑をかけてはいけないと注意を呼び掛けたのですが、記事では県外の部分だけが切り取られてしまいました」と公聴広報課の職員が知事の気持ちを代弁する。