ついに発表された文春野球ヤクルトの新体制

 コロナ禍に揺れる2020(令和2)年、春――。プロ野球の開幕はいまだ現実味のない夢物語のようだ。一方で、現実のペナントレースと歩調を合わせて進められてきた文春野球の4年目もまた、遠い世界の仮想現実の様相を呈している。

 ……と言いつつ、リーグ創設3年目となる昨シーズン限りで文春野球ヤクルトの監督を辞した僕は、昨年までのように年間の青写真を描いたり、他球団の戦力分析を行ったりする必要もなく、「早く文春野球、始まんねぇかなぁ~」と、一読者として情勢を見守っているだけのお気楽野郎なのだ。

©文藝春秋

 そんな状況下でゴールデンウイークに突入した5月1日、文春野球・村瀬秀信コミッショナーの手になる「コミッショナーだより」が急遽リリースされた。NPB開幕までの期間、「文春野球Cリーグ」が実施されるという告知とともに、このときついに「12球団監督」が発表されたのだ。

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 ついに明かされた文春野球ヤクルトの新監督――。そこには「遠藤修哉・週刊SPA!編集部」とある。多くの文春野球ファンが「誰だよ、遠藤?」と感じたことは想像に難くない。雑誌作りの裏方であり、黒子に徹することの多い編集者だから、知名度、認知度に劣るのは仕方がない。しかし、あなどってもらっては困る。この男、リアルガチのスワローズファンであると同時に、実に有能な編集者なのである。

文春野球ヤクルト・遠藤監督 ©大嶋奈都子

 多忙極まる週刊誌の編集者でありながら、遠藤という男はとにかくヒマを見つけては神宮球場に通っている。僕と同じく「一人観戦」が好きな男なのだろう。いつも一人で、熱心にグラウンドを凝視している姿は何度も見かけた。お互い「ぼっち観戦愛好派」同士なので、一緒に観戦することはなかったけれど観戦中の彼の様子はしばしばチラ見していた。

 ヤクルトが得点したときには小さくニヤリと笑い、失点したときには少しだけ顔をゆがめ、勝利すれば地味にガッツポーズ、敗戦を喫すれば軽くため息をつく……。はぐれ観戦冷静派としての観戦スタイルで、彼なりのヤクルト愛が伝わってくるのだった。