新型コロナウイルス対策で安倍政権がつまずく中で、全国の知事たちが中央に先駆けて次々に感染症対策を打ち出す前代未聞の事態が起きている。政治学者の御厨貴氏(東京大学名誉教授)に、全国の知事の評価と、いま日本政治に何が起こっているのかを聞いた。(東日本編はこちら)
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大阪府・吉村洋文「○」 若さでピンチをチャンスに変えた
ここまでの日本の新型コロナウイルス対策を振り返ると、3月20日~22日の3連休、兵庫―大阪間で「往来自粛」の要請が出されたことは特筆すべき出来事です。首都圏において、小池百合子都知事が会見で「外出自粛」を強く要請するのは、その3連休明けのこと。関西はより早い段階で対応をとっていた。その判断を下したのが、大阪の吉村洋文知事(44)です。
大阪くらいの大都市になると、行政にさまざまな要素が絡み合っている。なにか動かそうとしても、一気に物事が動かないものです。にもかかわらず、吉村知事は他県まで巻き込んだ移動制限をいち早く訴えるなど、これまで緩急自在にやってきています。文句なしの「○」です。
吉村知事の前任者で、同じ維新の大阪市の松井一郎市長(56)は、今ひとつです。4月23日の会見でも、スーパーが混雑している問題について「(女性は)商品を見ながらあれがいいとか時間がかかる。男は言われた物をぱぱっと買って帰れるから(男性が)買い物に行くのがいい」と発言して批判されるなど、言っていることも政策もチグハグな感じがします。
当然ながら、日本維新の会の代表でもある松井市長の方が政治家として格上ですが、こういう有事では、若い吉村知事の瞬発力の方が役に立つ。北海道の鈴木直道知事(39)に次いで全国で2番目に若い知事ですから体力もある。コロナ対策を次々にこなしていくうちに、的確な選択を取れるようになっていったのでしょう。