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 正直なところ、今回の安倍政権のコロナ対応には、点数の付けようがありません。今後もやれることはたくさんあるはずです。感染者への現場対応は各知事に任せたとしても、休業補償や医療体制の再構築、検査体制の強化など、いわば後方支援的な政策は中央にしか出来ません。

「停滞している安倍政権のコロナ対応は点数の付けようがない」と御厨氏は語る ©JMPA

 安倍政権が始まって8年目。これまで彼らは個々の課題を深く考えることなく、次々に政策を打ち出して「アクセルを吹かせる」ことを重視してきました。いわば、政治課題を次々に消費することで国民に対して「やってる感」を演出してきた。多少問題が出ても、次のテーマを打ち出せば、その勢いで誤魔化すことができた。

 ところが今回の感染症という課題は、いわばウイルスの方が勢いを作っている。自分たちでコントロールできず、自ら「やってる感」が出せない。その結果、ただ立ち止まっているように見えるのです。

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 いま彼に必要なのは、地方の後方支援策で「やってる感」を出すことです。ところが、8年に渡って前に立ってアクセルを吹かすことに専念してきただけに、いまさら後方支援という役回りに政権のテイストを変えられない。最終的には政権交代しない限り、新型コロナウイルス問題の収拾は難しいかもしれません。

ポスト安倍レースにも影響?

「ポスト安倍」を考えても、新型コロナウイルス問題は転換点になる可能性があります。コロナ対応で、安倍政権の閣僚や与党幹部たちは完全に「落第」です。この鉄火場でリーダーが立ち止まる現状に国民が不安を共有していることにも気づけず、地方への迅速な後方支援体制の確立という、これまでとは違った課題にも対応できていない。

東京大学名誉教授の御厨貴氏 ©文藝春秋

 岸田文雄政調会長(62)、菅義偉官房長官(71)、茂木敏充外務相(64)、河野太郎防衛大臣(57)、石破茂自民党元幹事長(63)……これまで名前が上がっている候補者は、中央で政治をしてきた人です。今後、中央と地方の関係が変わっていくと、地方で成功した首長から「ポスト安倍」に急浮上してくる可能性もあります。国民は新型コロナの経験で、危機に際して次々と対策をとっていくエネルギッシュなリーダーを望むようになっています。今回、紹介した知事たちが生み出す地方からのうねりが、日本政治を変えていくことになるかもしれません