新型コロナウイルス感染拡大の第2波が日本を襲う中、政治がタイムリーな対策を打ち出せないばかりか、官邸と都道府県知事の対立も顕在化している。なぜ“国難”を前に政治は空転しているのか。

 まだ緊急事態宣言が発出されていた5月に「知事たちの通信簿」と題して、全国の知事のコロナ対応を評価してもらった政治学者の御厨貴氏(東京大学名誉教授)に、その後の変化を踏まえて改めて聞いた。

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「vs.官邸」で浮き上がった小池知事の「×」

 全国で新型コロナの新規感染者が増加し続けているのに、国民が納得いくような具体的なコロナ対策が進みません。

 いまの全国の政治の現場から聞こえてくるのは、「国がダメだから対策が打てない」「知事が反発するから物事が動かない」といった声ばかり。まるで国と地方が都合良く、お互いを「できない言い訳」に利用し合っているような状況です。

うがい薬の使用を呼び掛ける大阪府の吉村洋文知事(8月4日) ©共同通信社

 分かりやすい例が、「Go Toトラベル」キャンペーンをめぐる官邸と東京の対立です。

 感染再拡大の責任を東京に押しつけて、キャンペーンを強行したいという思惑があったのでしょう。菅義偉官房長官は「新型コロナウイルスは東京の問題」(7月11日)と発言し、当然ながら東京都の小池百合子都知事は猛反発しました。小池氏は反撃し、「(Go Toキャンペーンと感染拡大防止の)整合性をどう取るのか。冷房と暖房を両方かけることにどう対応すればいいのか」と国の姿勢を批判しました。

 その結果、政府は議論を深めることもなく、東京を“無視”することで“決着”します。1兆3500億円もの予算を費やした政府肝いりの消費喚起キャンペーンは人口1400万人を誇る東京を除外することになり、スタートから大きく躓きました。

東京都の小池百合子知事 ©時事通信社

 もちろん、政府側の小池都知事個人に対する反発も強いのでしょう。官邸からすれば、この半年間、小池都知事に好き放題にやられました。「ロックダウン」「東京アラート」と、小池さんは官邸を突き上げるように次々に記者会見を行い、「国は東京よりも遅れている」「私に付いてきてください」と言わんばかりのアピールを続けたからです。この「演出巧者」ぶりは、実際に国を動かした部分もありましたから、私も5月の文春オンラインで評価しました。

 しかし、流石にやりすぎた面もある。というより、小池さんの持っている「手口」が使い尽くされた。小池さんには頼りになる参謀や盟友もいませんから応用が利かない。次の一手もなく、限界に直面しています。

 7月の都知事選までは勇ましかった小池さんが、選挙後には感染者数が増えても「皆様のご協力をさらに強めていかなければいけない警告」(7月23日)と状況説明に終始し、先導役を降りて「一緒に考えましょう」と都民の側に入ってきたようにも見える。小池さんが第2波を巡って会見を繰り返しても、春先のように迫力がないのは、このせいなのです。

 国も東京も「口は動くけど手は動いていない」状態で、これでは具体的な対策が進むわけもありません。