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【知事の通信簿】東京小池「やりすぎ×」、北海道鈴木「失速×」、大阪吉村「逆方向×」、和歌山、鳥取、岩手「○」

政治学者・御厨貴が採点 首相不在、地方はアピール合戦で空回りするコロナ政策

2020/08/07
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今後のキーマン「3人の共通点」とは?

 こうした現状の中で、私が今後の日本政治のキーマンとなり得るのは「地域に根ざしながら中央に顔の利く知事」たちではないかと考えています。

和歌山県の仁坂吉伸知事 ©文藝春秋

 元通産官僚で、地域の実態を読み切ってPCR検査などで国とは異なる独自路線を歩んだ和歌山県の仁坂吉伸知事。総務省出身で中央省庁の機微を熟知し、感染症対策として医療や保健所の体制整備を進めながらエリアを区切って対策を進める鳥取県の平井伸治知事などが挙げられるでしょう。

鳥取県の平井伸治知事 ©時事通信社

 さらには、外務省出身で衆院議員を4期務めた岩手県の達増拓也知事。広い県面積ながら中心地・盛岡以外の場所でも医療体制を充実させるべく、「地域外来・検査センター」を東北で一番多く作り、検査による陽性発覚を恐れないように「陽性者は咎めない」と積極的に発信し続けました。

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岩手県の達増拓也知事 ©時事通信社

 3人に共通するのは、地元の状況を的確に把握したうえで、中央の官僚や政治に顔を利かせ、予算に限りがある中でコロナの問題を小さく切り分けて、一つ一つ解決していること。中央の政府・官庁の状況がよく分かっているからこそ、無用な対立をおこすことなく、住民と一緒になってコロナ対策に当たることができているのです。

 この流れの先には、やがて都道府県間の連携をとるために、調停者として国が活躍する機会も出てくるでしょう。中央が現実から逃げ出し、地方もバラバラに対策を打っている日本政治の惨状は、コロナという外敵を契機に日本の政治のあり方が変わるプロセスの最中と言えます。

 一日も早く適切な対策を打ち出せるように日本政治を立ち直らせるためにも、地方政治にもっと注目していくべきかもしれません。

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