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常連客は「自分が店に行くことで他の客から女性を守る」

「多くは店の子に恋をしている、俗にいう『はまっているお客さん』。女の子の営業が上手いのもあります。そういったお客さんは『自分が店に行くことで他の客から守っている』と思われているようです。

 うちはソープですから、女の子は借金で首が回らなくなった子がほとんど。一番多いのはホストクラブ依存の子で、他にも買い物依存症や、整形費用に散財していたり、親や家族の借金を返すために来る子もいます。みな本音はこんな時期に働きたくない。ですが、借金がある上に店が開いているし、逆らって休むと干されてしまう。男性従業員はもっと酷い。休むと言うと簡単に切られています。家族を養うために怖いけど働くしかない」

 店はなぜ休業しないのか。そこにはランニングコストの問題があった。

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「一番は家賃です。ソープは権利商売なので特定の場所でしか営業できません。店は家主に月に何百万円と払っています。一応お風呂屋さんなので、水道代も月に100万円単位でかかる。それに従業員の人件費、何をしているかわからない幹部や顧問もたくさんいる。大きい声では言えませんが、反社会の人とのおつきあいもある。発熱者を隠してでも店は営業しないといけない。ですが、このまま営業を続けていたら、世間様に迷惑がかかります」

 A氏は危機感から、4月半ばに神奈川県の衛生管理課や川崎市の保健所に現状を内部告発した。だが、先方からはなしのつぶて。大きな変化はなかったと話す。

川崎市の保健所が入っている商業施設 ©文藝春秋

保健所は「発熱者が出たら、また教えてください」で終わり

「県の衛生課からは、保健所にあたってほしいというメールがきました。保健所の生活衛生課には店での身分を明かし、なぜもっと強く要請を店にかけないのかと聞いたのですが、発熱者が報告されないと何もできないようで、『発熱者が出たら、また教えてください』で終わり。お決まりの新型コロナ感染症専用ダイヤルに連絡をするよう指示されました。本当は保健所の衛生課って、ソープの天敵で、営業停止にできる生殺与奪の権を握っているわけですが、現時点では事なかれ主義ですね」

 ソープランドは保健所の許可がないと営業ができない。「X」も年1度の立ち入り検査を受けている。

川崎・堀之内のいま

「立ち入り検査は11月。毎年、事前にある程度の日が教えられます。店はその日になると、女の子のパネルを全部はずしてマットも隠し、『お風呂屋さん』として検査を待ちます。来店したお客様にも事情を説明します。立ち入り検査では『女性とやましいことはしていないか?』と職員に聞かれ『していません』と答えて終了。コンドームなどが見つかると再検査がありますが、それ以上の処分はありません。それが当たり前の業界です。そもそも業界内で取り締まる気がないのです。こんなときだからこそ、強く指導が入れば、休業せざるをえない」