羽佐間翔子は戦った。戦い、そして蒼穹(そうきゅう)に散った。
翔子の声を演じ38歳の若さで亡くなった声優の故・松来未祐氏は、その理由をこう推測している。
「自分の存在意義のためだと思っています。とても危うい自分自身の命、存在のために、戦ったのだと思います。」(『蒼穹のファフナーメモリアルブック』より)
アニメ「蒼穹のファフナー」の世界観
「蒼穹のファフナー」は2004年から今に至るまで続くアニメシリーズだ。WBCの合間に盛んにパチンコのCMが流れていたこともあり、名前を耳にしたことがある人も多いのではないか。
人類の大半が地球外生命体フェストゥムに滅ぼされた世界で、2000人程が昔ながらの文化を守って暮らす要塞艦「竜宮島」。2146年、束の間の平穏を破り、島はフェストゥムや、同じ人類でありながら敵対する「新国連人類軍」に発見されてしまう。
唯一の対抗手段は「ファフナー」と呼ばれるロボット。搭乗できるのは高い適性を備えた少年少女のみ。まだ中学3年生のパイロット達の、過酷な戦いが幕を開けた。
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— 蒼穹のファフナー (@fafnerproject) May 1, 2020
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病弱な羽佐間翔子というキャラクター
翔子は6話という序盤で犠牲になったパイロットだ。敵の襲来以前、島がまだ平和だった頃の翔子は、登校もままならない程病弱な中学3年生であった。学校の皆の様子を聞いては羨ましく思い、人の役に立ちたいと願いつつも、内向的な性格で、自分の存在意義に苦悩する日々を送っていた。
現実世界であれば、翔子のような人は非常時においても戦力にはならない。それどころかより一層足を引っ張ってしまうのが普通だ。実際1話で翔子はスムーズに地下に避難できず、そこに友達の真矢も巻き込む形になってしまう。この時は逃げ遅れたことが逆に幸いして2人とも助かったのだが、友達を危険に晒してしまった事は間違いない。
だがその後、翔子はファフナーパイロットとして高い適性を持っていることが判明する。それにより翔子の社会的価値は180度変わり、一躍「島を守る貴重な戦力」という存在意義と役割が与えられたのだ。「私にも仕事があるから」という台詞に象徴されるように、人の役に立てることやパイロット仲間と共に過ごせることを喜ぶ翔子。戦いに明け暮れる新たな日常の中に自分の存在意義を見つけた翔子は、苦痛に苛まれつつも充足感に包まれた最期を迎える。