不安やイライラから解放されるには「外の景色をボーっと眺める」
とはいえ、この非常事態に外に出て自由気ままにストレスを発散することは絶対に避けなければならない。どうすればいいのか。
「まず、“ステイホーム”を肯定的に捉えることが大事です。普段なかなか一緒にいられない家族とともに過ごせることで深まる絆もあるはず。そこに喜びを感じるようにするのです」
たしかに、「面倒な会議に出なくて済む」とか、「嫌な上司の顔を見ないので気がラクだ」、「通勤電車の苦痛から解放された」など、外出自粛を楽しんでいる人も、じつは少なくないのだ。同じ自粛生活を送るなら、ネガティブな思考に浸るよりも、前向きに楽しむくらいの意識を持ったほうがトクというものだ。
その上で丹羽医師はこう語る。
「不要不急の外出は控えながら、できれば午前中に短い時間でいいので、家族が別々で、あるいは十分な距離をとった上で、家の周囲の散歩、あるいはベランダに出たり窓を開けるなどして、外の景色をボーっと眺めるのです。こうすることで、セロトニンやドーパミン、あるいはコルチゾールやカルシウムなどの数値は安定します。外の景色を眺めながら、頭にウイルスへの恐怖や生活の不安がよぎっても構いません。それでも風景の美しさや草花の香りを味わうのです。不安を受け入れながらも、自然や景色に意識を向けることが重要です。
これはマインドフルネスという精神療法の一種で、こうした取り組みを1日1回でも行うことで、自分の身の回りに起きている騒動を一歩引いた立場で客観的に捉えることができるようになります。これまでの“前のめりの状態”が生み出していた不安やイライラから解放されるための一助になるのです」
日光に当たることで“ビタミンD”を作る
先ほど「精神的なストレスで体内のカルシウム値が下がる」と書いたが、これは自粛生活で日光に当たる時間が減ったことが関係している、と丹羽医師は指摘する。
「カルシウムは経口摂取しても腸での吸収力は低く、その吸収を助ける働きを持つのがビタミンDです。ビタミンDは日光を浴びることで生成されるので、家に閉じこもって日光に当たらない生活を続けていると、たとえ食事でカルシウムを摂っても効果的な吸収は期待できない。それよりは、ベランダに出てでも日光を浴びる時間を持つべきなのです」
丹羽医師は、一人暮らしの人に向けてはこうアドバイスをする。
「1日に1度、SkypeやZoom、あるいは電話でも構わないので、家族や友人と会話をしてください。会話により癒しが得られるだけでなく、自分の置かれた状況を言語化することで自分自身を客観視でき、不安や孤独感が減少していきます。それも難しいなら、日記を付けてください。いまの気持ちや状況をノートに書くことで“自分自身の客観視”につながり、精神的な落ちつきが得られるはずです」