長引く外出自粛が続き、世の中はかなりギスギスしています。
つねにイライラしていて、普段なら何とも思わないような些細なことに引っ掛かって、腹を立てる人が増えています。そして気の弱い人は、イライラしている人を見てハラハラし、クヨクヨ悩むという悪循環。
ただでさえ新型コロナウイルスへの対策で大変なのに、メンタルダウンまでしてしまったら、先の見通しも立ちません。
ちょっと立ち止まって、自分の「こころの声」に耳を傾けてみませんか。
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自粛の長期化で人々のストレスが増幅している
「政府の緊急事態宣言が発出されてから、日が経つにつれて精神面での疲労を訴える人が増えていることを実感します」
と語るのは、名古屋市西区にある「名駅さこうメンタルクリニック」院長で精神科専門医の丹羽亮平医師。その背景にはいくつかの要因がある、と指摘する。
「新型コロナウイルスが騒がれ始めた時期はまだ『短期的な取り組みで終息に向かう』と考えている人が多かった。当時の私たちが恐れる対象は、ウイルスだけだったのです。ところが、自粛が長期化し、しかも終息の気配も感じられない中で経済状態も悪化の一途を辿り、何より自分自身の不自由な生活がいつまで続くのかわからない、という不安が、精神的なストレスを増幅させていったのでしょう」(丹羽医師、以下同)
他にも、自粛がもたらす精神的なダメージがあるという。
「交感神経」と「副交感神経」の切り替えが困難に
会社で働いている時、学校で勉強している時、人は“意欲”に必要なノルアドレナリンという脳内の神経伝達物質を高めることで、自律神経のうち「交感神経」を優位にする。交感神経が優位の時、体は“戦闘に備える状態”にあるのだ。
逆に、自宅という安息の場に帰ると、もう一つの自律神経である「副交感神経」が優位になり、肉体的にも精神的にもリラックスできる仕組みなのだ。
心身ともに健康であれば、この「自律神経の切り替え」は、スムーズに行われる。
ところが、リモートワークに移ったことで、本来リラックスすべき自宅にいるのに、気持ちは戦闘状態にしなければならなくなった。これによって自律神経に負荷がかかるようになったのだ。
「短い期間なら順応できても、緊張状態が長期化し、また先の見通しが立たないという不安が、さらにストレスとなってダメージを及ぼす。結果として交感神経と副交感神経の切り替えがうまく行かなくなる、つまり“自律神経失調状態”に陥ってしまうのです」