医療現場でのマスク不足がいよいよ深刻化してきた。
「業者にはずっと頼んでいるけれど、全然入ってこない。このままだと2カ月はもたない。いよいよ無くなったら閉院を考えないと……」
とため息をつくのは、首都圏の耳鼻咽喉科医院の院長だ。
診療報酬の引き下げや都心部の地価高騰、地方では医師不足や人口減少など、医療経営を巡る問題は山積だ。どの経営者も苦労を重ねているし、いつどこの医療機関が潰れても不思議ではない状況が続いてきた。
しかし、よもや「マスクがない」という理由で閉院を余儀なくされる事態を迎えようとは、誰も考えていなかっただろう。
大きな病院でも「1週間に1枚の支給」に
こんな声もある。首都圏の脳神経外科クリニックの院長だ。
「マスクは問屋からはまったく入ってきません。恥ずかしながら、職員の実家から送ってもらったものを買い取ったり、職員がドラッグストアに並ぶなどして、どうにか手に入れている、といった状況です。完全に無くなったら診療継続は困難。どうしても困ったときは、たとえ高額でもネットで購入することになるのでしょう」
患者を救うために、人の道をはずれた出品者から法外な金額でマスクを買わざるを得ない状況も視野に入っていたわけだが、その後マスクの高値転売は禁止された。ただ、これによって、マスク確保の道はさらに遠のいたかもしれない。
そこまで困窮してはいなくても、
「従来は患者1人診るたびに取り換えていたが、午前と午後で1枚ずつになった」
「外来については1日で1枚の支給になった」
「医師や看護師など患者と接する業務の職員は1日1枚。患者と接することのない部署の職員への支給は停止されている。各自で用意しなければならないので気の毒です」
「今月いっぱいのマスクの在庫はあるが、来月以降は未定。もしマスクがなくなれば、職員の健康が守れないので、診療の抑制、手術の抑制なども検討しないと……」(首都圏の大学病院)
などの声が聞こえてくる。