新型コロナに「勝利」をおさめたといっていい台湾。対策成功の理由を、「日本台湾交流協会」台北事務所(大使館に相当)の泉裕泰代表に聞く。後編のテーマは、政府の強力な権限が必要とされる感染症対策と、民主主義は両立するのか。自らの権利を重視する台湾の市民たちが一致協力した背景には、政権の「丁寧な説明」と「ユーモア」があった。( 全2回の2回目 /前編から続く)
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一つ、指摘しておかなければならないことがあります。世界に広がった新型コロナウイルスへの対応をめぐって、一部には、「政府の強力な権限や市民の自由の制限等を必要とする感染症対策は、民主主義とは相性が悪い」という議論があるようです。その側面を否定するものではありませんが、台湾は今回もう一つ、「徹底した民主主義社会における徹底した感染症対策」が可能であることを、示してくれたと思っています。
自らの権利を重視する台湾の人たち
防疫のためにはどうしても、誰もが平時と同じような自由を享受することは難しくなります。罰則規定を伴う台湾の厳格な各種対応に対しても、今回、導入当初に市民から全く反発がなかった訳ではありません。しかし、結果としては大きな混乱もなく、大多数の人が協力することで、その成果を確かなものとしたのです。
それは、台湾が普段から、お上の指示に素直に従う社会だからでしょうか? いいえ、むしろ全く逆と言ってよいかもしれません。流血革命を経ずに、しかし素手で戦って現在の民主体制を勝ち取ってきた台湾の人たちは、自らの権利をとても重視していると思います。