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必要なことは政権による「丁寧な説明」と「ユーモア」――台湾はなぜ「新型コロナ」に勝てたのか #2

「日本台湾交流協会」台北事務所・泉裕泰代表に聞く「新型コロナ100日間の戦い」 #2

2020/05/10

 1月に、史上最高の得票数で再選された蔡英文総統ですが、そのたった1年ほど前の統一地方選挙では、蔡政権への不満は頂点に達していて、蔡氏率いる民進党は、歴史的惨敗を喫しました。台湾の有権者は、為政者が誰であれ、納得できなければ、はっきりとその意思を示すのです。中国とのサービス貿易取決めに反対する学生らが立法院を占拠した2014年の「ひまわり学生運動」のことは、まだ記憶に新しいと思います。2016年の蔡政権発足後も、同性婚や労働争議から地域の暮らしのことまで、多くの人が、路上で、ネット上で抗議の声を上げ、権利を勝ち取ってきました。

蔡英文総統 ©AFLO

台湾のパワーの秘密は“ユーモア”?

 さて、話を戻しましょう。このように、自由で権利意識が浸透している台湾において、人々が一致団結して、様々な規制や自粛に協力してきたのはなぜなのか。それは、前編でご紹介した、政権による丁寧な説明や情報公開といった、メディアを通した市民との粘り強い対話、それによって築かれた相互信頼によるものなのではないかと、私は思います。

 もちろん人間ですから、疲れてテレビカメラの前で思わずきつい言葉を発してしまうこともあります。そんな時、陳部長は次の日の会見で、「昨日は申し訳なかった、あれは私の双子の弟なので、許してやってくれ」と、ユーモアを交えて謝罪していて、思わずこちらも笑ってしまいました。ユーモアというのは、ひょっとすると、台湾のパワーの秘密なのかもしれません。私は、オードリー・タンさんにお会いしたことがあるのですが、ITのプロである彼女も、ぎすぎすしがちなネットの世界では、ユーモアが一番強いのだ、と言っていました。とても早口で、聴き取るのが大変でしたけれど。

 ユーモアついでに、日本ではあまり紹介されていない、台湾のユニークな防疫対策についてお話ししたいと思います。指揮センターが立ち上がってから、連日のように、「手を洗おう」「週末は家にいよう」等の呼びかけがなされています。この呼びかけを行うデジタルポスターに、陳部長の分身だという柴犬が登場します。実によく似ています。なぜ柴犬なのか、日本が好きだからなのか、お顔が柴犬に似ているからなのか、今度ぜひ聞いてみたいと思っています。

台湾で話題になったポスター。柴犬のソーシャルディスタンス
台湾で話題になったポスター。柴犬の連休計画

 かわいい柴犬が、手を替え品を替え面白く呼びかけるので、何となく顔がほころび、ぜひ私も協力しよう、という気分になります。例えて言うなら、柴犬のマスコットで結ばれた大勢の人と一緒に、共同作業に取り組んでいるような感覚でしょうか。