彼らは生きるために食べ、食べるために生きている
セルビアではガンになった10代の少年が、治療費を稼ぐため国境を越えようとしている。
フィリピンではゴミを漁り、骨についた食べ残しの肉を集めて生活をしている子供たちが楽しそうに笑っている。
切り取られた人生をカメラ越しで数十分見ただけなのに、会ったこともない、遠く離れた地球の裏側にいる人達に想いを馳せる。彼らは今も生きている。生きるために食べ、食べるために生きている。
日々怠惰な生活を送っている私なんかより、彼らはよっぽど真剣に生きている気がした。
なんと贅沢な食べ方だろうか
……ちなみにこのハイパーハードボイルドグルメリポートは書籍版も出ていて、一つひとつのエピソードをディレクターの上出遼平さんがどういう思いで撮っていたのか、撮影の合間にあった事件、その地域の時代背景などが大ボリュームでわかりやすく綴られている。それを読むと、この数十分ぽっちの映像がいかに濃縮された物なのかを知ることができる。
たとえるのなら、映像はマグロでいう大トロの部分を切り取っただけに過ぎず、中トロや赤身などの食べられる部分がたくさん残っているのに、そこはすべてカットしてある。なんと贅沢な食べ方だろうか……。
貧乏性の私は、赤身どころかカマの部分まで調理して出したくなる性分なので、この作品の作り方には同じ物を作る者としてただただ尊敬してしまう。
映像をすべて見終わった人は、書籍版もぜひ読んでもらいたい。