ネットで明かされている情報によると、入場料は2万ウォン(約1800円)程度とホテルなどに比べてかなり安い。そのため夜明けにクラブを出た同性愛者たちが休息のためにここを訪れるという。
「ブラック睡眠部屋」は、ソウルだけでも梨泰院と江南(カンナム)を中心に数十カ所が運営中とされる。入場者は服を脱いで携帯を切ってから入場するため携帯電話のデータからの追跡は難しく、報道の通り現金払いが中心のためカードの利用履歴からの追跡も困難だ。
このような事情から、京畿道では該当する風俗店の出入り履歴を公開することは止め、感染が懸念される期間に梨泰院を訪問したことがある人は誰でも無料でコロナ検査を受けられる、という形で検査を呼びかける特別な措置を始めた。なお、今回の事態を受けて、ソウル市と京畿道は、クラブをはじめとする全風俗店に対して2週間の集合禁止命令を下した。
「第2の新天地」と呼ばれる理由
今回の集団感染は、2月17日以降、韓国を恐怖に追い込んだ大邱(テグ)の新興宗教「新天地教会」発のコロナ感染の大流行と類似点が多い。韓国メディアでは「第2の新天地」と、懸念する声が高まっている。
まず、密閉、密集、密接、いわゆる「3密」の危険性の高い施設で感染が発生し、瞬く間に全国に広がったことだ。大邱の新天地教会が全国の新天地信徒が訪れる「聖地」だったなら、今回最も多くの感染者が出た梨泰院のゲイクラブ「キング(King)」は、特定クラバーたちの「聖地」。今回もオープン3周年を迎え、全国からクラバーが集まっていた。その結果、ソウルと京畿道だけでなく、大邱、釜山(プサン)、済州(チェジュ)まで全国にわたって感染者が続々と発見されている。
数千人規模の濃厚接触者がいる点も共通だ。大邱の新天地教会の集団感染では約9000人の信徒が濃厚接触者として分類され検査を受けた。梨泰院クラブの場合も感染の危険があった時期の4月30日~5月6日の間にクラブを訪れた約5500人を濃厚接触者として分類し、入場客全員に検査を行う予定だ。
しかし、最も憂慮される共通点は、社会的マイノリティーが利用する施設で集団感染が起こり、防疫当局が疫学調査に困難を来たしている点だ。大邱・新天地教会でコロナ感染者が初めて発生した時、韓国社会で異端として扱われている新天地教会の信徒や教会側は身元が露出することを嫌って、防疫に非協力的な態度を見せた。結果、大邱地域でコロナが蔓延する不幸な事態をもたらした。今回の梨泰院のケースも、先に述べた通り、濃厚接触者の追跡は困難を極めている。