新型コロナは、他の国々と同じように韓国人の生活を完全に変えた。外出の際にはマスクが必須になり、マスクに黄金並みの価値があるという意味で「金スク(金+マスク)」という言葉が流行するほどマスクの品薄状態が続いた。なるべく外出を控え、外出するなら人と人とは1~2メートルの距離を保たなければならないという「社会的距離を置く」方針などが、コロナ時代の「ニューノーマル(NEW NORMAL)」として受け入れられている。

 ところが、最近、ソウルでは、そのニューノーマルとは程遠い風景が、あちこちで目につくようになった。

ソウル・現代デパートのフードコート(著者撮影)

整形手術の顧客が増加した

 韓国で初のコロナ感染者が発生してから100日経った4月28日、ソウル江南(カンナム)の某所で久しぶりに友達とランチをした。江南で小さい皮膚科を経営している女医の友達は、「コロナのせいで顧客が減ったのではないか」という私の慰めの言葉に意外な話を聞かせてくれた。

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「はじめは大変だったけど、最近は顧客が再び回復しているわよ。むしろテレワークやマスク着用のおかげで、レーザー施術のように高価な治療を希望する顧客が増えた」

 レーザー施術後はしばらくの間化粧ができないため、まとまった休暇がもらえる冬季と夏季に人気のある治療法だった。ところが、コロナのおかげで、何も疑われずマスクで顔を隠せるため、レーザー施術を受ける顧客が増えたというのだ。さらに他人と顔を合わせないテレワークが長引いたことから、その間に整形手術をする若い女性も増えたという。

 このような傾向は病院だけでない。いま韓国経済の全般にわたって「顧客」が増えていることは肌で感じられる。この日、ランチを食べたいと思っていたレストランには空席がなかった。「ご時世だから、予約しなくても入れるだろう」と油断したのが失敗だった。

現代デパートの「デパ地下」(筆者撮影)

 帰りに寄ったデパ地下も「顧客」であふれていた。人気デザートの売り場の前には、間隔2メートルどころか、ぴったりと寄り添った長い列が作られていた。

「報復消費」でリゾート地に客殺到

 韓国メディアは、コロナ感染拡散が縮小している最近、デパートや高級レストランなどに人が殺到する現象を受け、「報復消費の兆しが見える」と報じている。

新世界百貨店の「デパ地下」(著者撮影)

「報復消費」とは、疾病・災難などの外部要因から抑えられてきた消費が、一気に噴出する現象のことだ。特に、贅沢品の消費が増えるのが一般的だという。

 大型連休を迎えた韓国の旅行関連業界は、今回のコロナにおける「報復消費」の格好の受け皿となった。

 4月30日から5月5日まで6日間のゴールデンウィークに入った韓国では、宿泊施設や航空会社に予約が殺到し、関連業界では嬉しい悲鳴を上げている。