韓国国民は何に失望したのか
防疫当局の努力や国民の心配にもかかわらず、梨泰院の感染が発覚した後の先週末も、ソウルの代表的な風俗街である弘大前や江南では、居酒屋の前に長い行列ができた様子が報道された。韓国社会では、分別のない若者たちに対する憂慮と怒りが起きている。
集団感染の原因となった20代の男性が住むマンションには、彼と両親を非難する張り紙が貼られた。また、梨泰院のクラブでマスクもつけずに多くの若い男性たちが寄り添って踊っている動画が流布されると、ネットでも彼らを非難する書き込みが殺到した。
このような韓国人の反応について、韓国のマスコミは、今後同性愛者に対する嫌悪感が引き起こされるのではないかと懸念を示している。
しかし、憤っている多くの韓国人は、彼らが同性愛者だから非難したわけではないだろう。韓国人なら誰もが大事な私生活を犠牲にして守っていた防疫のルールが、少数の若者たちの行動によって水の泡と化してしまったことに怒りを感じ、失望感を持っているのだ。
高校3年の受験生の娘を持つ友人は、5月13日から再開予定だった学校の授業が、今回の梨泰院の一件で再び中止になるのではないかと心配している。
「うちはもう2カ月以上も娘を学校にも塾にも行かせられていない。それなのに、若者たちがクラブで踊って遊んでいる姿を見たら、とても腹が立つ。このような自己中心的な人のため、子どもたちだけが被害を受けるなんてあんまりです」
認知症の母を療養病院に預けている友人は、5月8日(韓国の両親の日)に療養病院を訪問したが、コロナ対策のため会うことはできず、そのまま戻ってきたという。
「母には電話で『会いたい』と泣かれました。もう3カ月近く面会ができていないのですから当然ですよね。6月13日が母の誕生日なので、『必ず会おうね』と言ったところですが、今度のクラブの一件で難しくなるかも知れない。そう思うと、とても心配。このまま会えずに母が亡くなるのが怖いです」
韓国は今回の事態を乗り越えて、韓国政府が世界に売り出し中の「K防疫」の名声をふたたび得ることが出来るのだろうか。