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「怒る理由もわかる」と芸能人を擁護する側も……

 小泉さんやきゃりーさんに対する「先の見えない自粛生活を強いられてストレスがたまってるんだよね」「エンタメ業界は特に今大変だから、怒る理由もわかる」といったような擁護の声も多くあります。「私たちは芸能人をちゃんと『人』として見てますよ」というやつです。しかし思うのですが、そもそもなぜ怒るかなんて、それこそ今日子の勝手じゃないですかね、カーカー。「ストレスが溜まってイライラしてる」とか「役者仲間の多くが窮地に立たされてるから」とかわかりやすい理由を当て込んで、落ち着きたいのはあくまで視聴者側なのでは。

 きゃりーさんがツイッター削除の理由をメモにして投稿していましたが、その中にあった「自分たちの未来を守りたい」「自分たちで守るべきだと思い呟きました」という一文。ストレスがたまっているからとか、エンタメ業界が窮地に陥っているからとか、そんな「しっくりくる」理由ではない、あのツイートはもっと感覚的な危機を覚えてのことだったのではないかと、私も勝手に推測しました。それを立場や属性だけに負わせてわかったような口きいてくれるなよと、これは私じゃないです、私の心の「厚木の小泉パイセン」が申しております。

5月11日、きゃりーぱみゅぱみゅさんのツイート

浦沢直樹さんや秋元才加さんにぶつける怒りの正体

 そして芸能人の「怒」より、人々が怯むことが実はあります。漫画家の浦沢直樹さんが安倍首相が小さいマスクをつけているイラストをツイッターにアップした時の大炎上と、秋元才加さんがマスク2枚を手に真剣な表情でただ踊っている動画への大ブーイングを見て、私は思いました。小泉さんの「汚らしい嘘や狡」みたいなストロングスタイルではない、どちらも強烈な批判とは言い難いものだったのになぜあそこまで人々は怒りや失望を二人にぶつけたのか。

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4月2日、浦沢直樹さんのツイート

 

4月2日、秋元才加さんのツイート

 それはおそらく、あの「ただの似顔絵」「ただの真顔のダンス」からわかりやすい意味が汲み取れなかったからではないでしょうか。意味はわからないけど、いや意味がわからないから、なんかバカにされてる気がする。見てる側が上に立てなくて、イライラしてしまう。それは「怒り」の表明よりもっと強烈にコンプレックスを刺激するのかもしれない。芸能人は「自分たちを楽しませる」だけじゃない、さらに「わかりやすい『記号』」としても存在しなければならないのです。大変ですね。

秋元才加さん ©文藝春秋

 芸能人に「親近感」を覚えるのは大好きだけど、いざ芸能人が「人間」であろうとすると牙を剥く、俺たちゃ勝手な一般人です。しかしながらコロナは確実に芸能人から「楽しくしなきゃ」「みんなを喜ばせなきゃ」という鎧を脱がせつつある。どんどこ増えていく有名人による「#検察庁法改正案に抗議します」ツイートを見て、そんなことを思いました。