2015年12月28日、日韓外相会談で日韓合意が共同記者会見の形で発表された。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を両国は確認、発表したのだ。
「日韓外相会談の様子は韓国内でも生放送され注目されました。当時は、日韓合意は歴史的な外交成果になるという期待が高まっていた」(ソウル特派員)
日本政府が10億円の資金を拠出した「癒やし財団」
日韓合意に基づき設立されたのが「和解・癒やし財団(以下・癒やし財団)」だった。財団は日本政府が10億円の資金を拠出、運営は韓国サイドで行われた。支援事業として元慰安婦には1億ウォン(約1000万円)、遺族には2000万ウォン(約200万円)が支給されることなどが決められた。
李容洙氏が問題にしたのは、この日本政府が拠出する10億円について尹美香氏だけが「事前に知っていた」ことだった。
「文在寅政権は日韓合意には『被害者の声が十分反映されていない』とし、事実上の破棄状態にしています。文政権の判断に大きな影響を与えたのが、合意後の、尹美香氏らによる『被害者の意見を吸い上げていない拙速合意』という日韓合意批判だったのです」(前出・ソウル特派員)
極秘裏に尹美香氏だけが知っていた
2015年の合意前、韓国外交部スタッフは極秘裏に尹美香氏に接触していたといわれる。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」のためには彼女が代表を務める挺対協の同意が不可欠とされたからだ。
「韓国外交部からは元慰安婦のために日本政府から10億円が拠出される話も尹美香氏には伝えられた。同時に給付を終えた『癒やし財団』を10億円の残金と共に挺対協が引受けるというシナリオなども検討されたといいます」(日本・外務省関係者)
2017年、文在寅政権発足後、日韓合意の検証が行われた。検証を行ったタスクフォースが出した結論は「日韓合意は被害者中心主義から外れており欠陥が重大だ」というものだった。2019年には「癒やし財団」が解散させられ、日韓合意は有名無実化してしまう。慰安婦問題は解決どころか、再び振り出しに戻ってしまった。
「尹美香氏は『日韓合意は被害者への相談が全くなかった』と批判を繰り返していましたが、本人が内容を知っていたとなると話は全く違ってきます。元慰安婦支援団体の代表として外交省からレクチャーを受けた訳ですから、被害者にも内容を伝え意見を聴くこともできたはず。同時期、尹美香氏が数日間姿を晦ました時期があったことは関係者の間では有名な話です」(元慰安婦支援者)