コロナウイルス対策では非常にうまく立ち回っていた韓国で、ソウルのゲイクラブを起点とした大量感染が始まった、というニュースを見て「これは」と思ったんですよね。緊急事態宣言や外出禁止令が緩和されて、気が緩んだところで再び感染拡大! というのは想定したとしても、まさかそのクラスターがよりによってゲイクラブだったとは。

「淫靡なところには出入りしないように」

 また、そういう場所に出入りしている人は、保健所などからの追跡調査に応じないってのもよく分かる。日本でも、いわゆる「夜の街クラスタ」が感染拡大に寄与していたとされたとき、感染経路を教えてくれなくて「感染経路不明」というジャンルに分類されていたのもよく分かります。

韓国ゲイクラブで何が起きていたのか?《クラスター化でコロナ再流行の危機》
https://bunshun.jp/articles/-/37747

ADVERTISEMENT

©iStock.com

 この手の話はよく広がるもので、仕事がらみのオンライン会議でも雑談で「皆さん、淫靡なところには出入りしないように」と発注元のハゲおやじがゲヘゲヘ言いながら女性参加者の失笑を買っているのを見ると、思わず「お前の映像自体が猥褻物陳列になっとるやないか」とツッコミを入れたくなります。

 ゴールデンウィークが明けても緊急事態宣言が5月末まで延長になったあと、持ちこたえきれなくなった飲食店のなかに自粛をかなぐり捨ててランチも夜も営業し始めるところがぼちぼち出てきました。おカネがなければ死んじゃうからね、しょうがないね。いつもは養鶏場のように他の客と肩を寄せ合うようにむさぼり食べていた牛丼屋も、「ソーシャルディスタンスを取れ」の美名とともに間を一席空けさせられた分、店の外に並ぶ人たちが濃厚接触になっております。

自粛警察や自粛自警団が飛んでくる

 なにぶんそんな状態なので、パチンコ屋の行列であれ薬局の前に早朝並ぶジジイであれ、あまり品行方正とは言えない人たちの行動は矢鱈に目立つようになりました。多少手に入りやすくなったマスクもつけずに満員電車に乗っている人たちにはイチャモンがつけられ、タクシーに乗るとあれだけウザかった各種広告がさっぱりなくなって車内がとても静かです。

©iStock.com

 活動自粛とは、かくも国民を静かにさせ、品行方正に慎ましく家で暮らすことが美徳とされ、何かしでかすと途端に見咎められて自粛警察や自粛自警団が飛んでくるニューノーマルが実現しつつあるということでしょうか。冒頭に述べた韓国も、最初こそ変な宗教団体による感染拡大があったものの、その後は国民の権利は大きく制限され、位置情報を確認できるアプリが出回るようになりました。すると、一気に感染者数も死者も減って、メチャクチャ統制取れてるじゃないですか。さすがは休戦中の韓国だ、首都ソウルの目と鼻の先に面白独裁ブラザーズがいる国は訳が違うと思っていたんですよ。

 なのに、少し気を緩めて外出禁止を撤回してみたら、まさかゲイクラブが感染再拡大の母体になってしまうとは……。確かに、こういうところに出入りする人たちにとって位置情報なんて絶対に知られたくないセンシティブなものなのでしょう。