そして、河野太郎防衛相に病院船新造の陳情を行った病院船議連の会長は、日刊工業新聞が伝えるところによれば「どうせ造るなら世界最高水準の病院船を造るべきだ」と訴えたという。この議連は全長約200メートル、幅約30メートル、35,000総トンという、マーシー級に次ぐ規模の巨大な病院船の建造を訴えている。先の戦艦大和を踏まえると、嫌な予感しかしないアピールである。
せめて教訓を待て
前述したように、新型コロナウイルスの世界的流行は未収束であり、その対応も各国とも手探りの状態で、マーシー級ら病院船活用の教訓も出ていない。本当に感染症対策に活用できる病院船を建造したいなら、今は研究と知見の集積を待つべきではないか。
現在、専用の病院船を持つ国は、筆者が知る限り空母を運用する国よりも少ない(離島を巡る非軍用の小型の病院船を除く)。現在の海上自衛隊もそうだが、大型艦や支援艦艇に手術室を備えるなど、病院機能を併設するか増設可能な形で済ます国が多い。空母以上に希少な船を保有するのなら、もっと慎重であるべきだろう。
なにより、感染症対策を謳うなら、平時からの感染症情報の収集・研究の要である、国立感染症研究所の機能強化が先に来るのが筋と考えるが、病院船に関しては超党派議連が2つも立ち上がっている反面、こちらの動きは明らかに鈍い。病院船1隻の建造費は規模にもよるが数百億はかかるが、現在の感染症研究所の年間予算は100億にも満たない。感染症対策を名目にするなら、やるべきことは別にあるだろう。
何事も優先順位を整理しようぜ。
※2020年5月17日追記:議連の名称を「災害医療船舶利活用推進議員連盟」としておりましたが、正しくは「超党派・災害時医療等船舶利活用推進議員連盟」でした。お詫びして訂正します。