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米軍の病院船『マーシー』来航 災害時に「海からのアプローチ」は必要か?

災害大国・日本における病院船保有議論について考えてみた

2018/06/22
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 世界最大の病院船である米海軍の『マーシー』が来日し、6月16日には東京で一般見学者・メディア関係者に対する公開が行われ、17日には災害医療関係者による日米共同訓練が実施された。

在日米軍Twitterより

軍事的というより防災の意味合いが強い

 朝鮮半島情勢が動きを見せる中での『マーシー』来日に警戒感を持つ人もネット上で見られたが、『マーシー』の来日は昨年には決まっていた。今回が初来日となるが、その実現にあたっては、かねてから自民・公明両党の議員からなる「海洋国日本の災害医療の未来を考える議員連盟」が国に働きかけており、ようやく実現に漕ぎ着けた形だ。

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 そのような経緯から、米軍艦船の公開でありながら、主催は米軍や防衛省ではなく、内閣府(防災担当)によるものだ。『マーシー』の来日は、災害医療への船舶の活用と病院船の課題への示唆を得ると共に、議論を喚起することを目的にしており、軍事的というより、防災の意味合いが強い。今回は、『マーシー』来日の意味を、病院船の役割、そして日本における病院船保有議論から考えていきたい。

東京に入港した『マーシー』(米軍サイトより)

海上でも地上の病院と変わらない医療活動

『マーシー』はサン・クレメンテ級石油タンカーを改造し、1986年に就役した排水量約7万トン級の世界最大の病院船で、12の手術室、レントゲン設備やCTスキャナといった医療器具を搭載し、集中治療設備は80床、約1000床のベッドを備えている。

 日本の病院で、病床数900以上の病院は全体の1%に満たないことからも、いかに『マーシー』が巨大かが分かるだろう。また、真水や酸素を船内で製造できる能力を備えており、海上でも地上の病院と変わらない医療活動を行えるようになっている。普段は米カリフォルニア州のサンディエゴで最少の人員で維持されているが、命令を受ければ5日以内に約1200名の医療スタッフが集められ、作戦行動に入る体制が整えられている。