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コロナ禍で注目集まる病院船、ここまでわかった「不都合な真実」

導入論は過熱する一方だが……

2020/05/15

 新型コロナウイルスの世界的流行は未だに収束の気配がなく、流行を抑えたかにみえた国でも新たに集団感染が発生するなど、予断を許さない状況にある。誰もが解決のための決定打を欲しているだろう。

 そういう背景もあってか、最近の我が国で活発化している動きがある。30年近く検討されているものの実現に至ってない病院機能を備えた船舶(病院船)導入議論が、「感染症対策に役立つ」という触れ込みで再び勢いを見せてきたのだ。

ニューヨークに到着した米軍の病院船「コンフォート」(米インド太平洋艦隊サイトより)

病院船関連議連が2つも設立

 2月27日には与野党の議員により「超党派・災害時医療等船舶利活用推進議員連盟」が設立。また、3月3日には、これまた超党派の「病院船建造推進超党派議員連盟」が7年ぶりの総会を開き、会の名称を「病院船・災害時多目的支援船建造推進議員連盟」(病院船議連)と改め、陳情活動を行っている。両議連は既存船舶を含むか、新たに建造するかで差異はあるものの、病院機能を有する船舶を導入しようという主張は一致し、政府・国会への働きかけを強めている。

 病院船はかつて国外派遣や災害対策等を名目としてたびたび導入が議論されては見送られてきたが、今回は新型コロナ流行を受けて感染症対策名目としてよみがえった形だ。5月5日の日本経済新聞が伝えるところによれば、造船大手が病院船建造プランを抱えて「省庁詣で」を本格化させているという。造船会社が絡んだと思しきプランの話も流れてくるが、病院船どころか揚陸用ホバークラフトを搭載した揚陸艦を思わせるような案もある。

高まる期待は本当か

 そして、今回のコロナ禍を受けて、病院船を期待する記事がいくつか見られた。流行が深刻なアメリカで、世界最大の病院船マーシー級2隻が出動したことが大きく報道されたせいもあるだろう。筆者も武漢からの帰国者が問題になった1月頃は、「感染者・感染の可能性がある人の一時隔離施設として病院船は使えるかな」程度には考えていた。だが、その後のダイヤモンド・プリンセス号の状況を見て、病院船の感染症対策への利用は問題が多いと考えを改めた。

 以前、筆者は文春オンライン等で病院船についての記事(米軍の病院船『マーシー』来航 災害時に「海からのアプローチ」は必要か?)を書いたことがあるが、紹介や基本事項、メリット、デメリットを筆者なりに中立的にまとめたつもりでも、「病院船の必要性がわかりました」みたいな反応をされたり、今回のコロナ禍で導入を訴える側から引用されたりして困惑したことがある。

 そこで本稿では、コロナ禍を契機に過熱する病院船導入論に関して、わずかなりとも冷却を試みるべく、コロナ禍で明らかになった問題、それ以前からの病院船の問題、そして我が国の病院船導入議論の問題について記述したい。