新型コロナウイルスの感染者が急増し、医療崩壊寸前にまで追い詰められた東京都は、軽症・無症状者をホテルや自宅で療養させている。そして療養開始から2週間たてば、自動的に「治癒」したと見なし、PCR検査をせずに、療養を解除している。これらは国の方針に基づいた施策である。
だが、杉並区は「そうしたやり方では陰性になったかどうか分からない」として、入院者と同じように、PCR検査で2回連続陰性にならない限り、自宅療養を解除していない。
杉並区の自宅療養者は5月12日時点で22人いたが、そのうちの6割に当たる13人が、療養開始から2週間を超えても一度も陰性になっていなかった。東京都の扱いでは「治癒」とされる人々である。
「治ったと思い込んでいる」陽性者たち
政府は5月14日、39県の緊急事態宣言を解除した。東京都などでも事業再開が進み、世の中の自粛ムードが一気に緩んでいる。だが、現実には多くの陽性者がいるのが実情だ。未確認の陽性者だけではない。一度陽性判定された療養者に対して、杉並区のように陰性確認している自治体ばかりではないからだ。PCR検査をしていないまま療養を解除している自治体は東京都以外にもある。
もし、こうした人々が陽性と知らないまま通常の社会生活を再開させたらどうなるのか。
「杉並区の状況から類推すると、多くの陽性者が治ったと思い込んでいる恐れがあります。では、陽性であっても感染後期なら人に感染させないのか。再陽性が報告されているにもかかわらず、2週間を超えてウイルスを増殖させる人はいないのか。例えばこうした疑問について科学的な根拠がない限り、感染拡大を抑止するためには、PCR検査をしたうえで治癒とすべきではないでしょうか」と区は問題提起している。
なぜ自宅療養者にはPCR検査を行わないのか?
新型コロナウイルスは2月に指定感染症となり、当初は感染症法に基づいて陽性者全員が入院させられた。ところが感染者が急増し、重症者用の病床が不足し始めたため、厚生労働省は都道府県などに宛てた「事務連絡」で軽症・無症状者を原則、自宅療養とする通知を出した。PCR検査についても、重症者への医療に支障が生じるおそれがある場合、自宅療養者などには行わず、14日経過すると自動的に療養を解除できると通知した。都はこれに基づき、自宅療養者にPCR検査を行っていない。
なぜ2週間なのか。