一方、杉並区は5月12日時点での累計感染者数が240人と、東京23区で4番目に多い。一時は自宅療養者が50人を超えたため、区保健所が独自の「勧告書」を陽性者に出すなどして、都の用意したホテルへの入所を強く求めてきた。
それでもホテル療養を拒む人には、やむなく自宅療養を認めているが、病院と同じく2回のPCR検査で連続陰性となるまで「療養解除」としていない。「入院措置の代わりの療養なので、同じように検査しなければ整合性がとれない」からだ。
ただし、都のホテルに入った患者は2週間で自動的に「治癒」とされてしまう。そこで区は、独自策として引き続き自宅療養に移行してもらい、2回連続で陰性を確認してから「完治」としている。
「2回連続陰性」までに37日かかった人も
こうした「杉並方式」で自宅療養をしているのは、5月12日時点で22人だ。ところが、なんとそのうち21人が療養開始から2週間以上経過しているのに、2回連続の陰性確認ができていない。国・都の基準では「治癒」とされているのに、である。
しかも、その6割に当たる13人は一度も陰性になっていない。
また、過去に杉並方式で「完治」した元自宅療養者38人についても、療養開始から2週間で「2回連続陰性」をクリアできた人はゼロだった。最短で15日、最長では37日。平均では19.8日もかかった。
こうした療養者の中には「陰性になるまで、きっちり隔離してほしい。その方が安心できる」「会社からも陰性確認を求められている」と話す人がいるものの、「国や都の基準では2週間で普通の生活に戻れるのに、杉並では陰性化するまで就業が制限される。納得できない」と反発する人もいる。
陰性確認できないままホテルを出される
確かに療養が長引けば収入は減るだろう。だが、自分は陰性になっていないと分かっていながら通常の社会生活が送れる人はそれほど多くないのではあるまいか。陽性者が出入りした施設は消毒のために一時閉鎖されることもある。店舗などで悪ふざけで「自分は陽性だ」と告げ、威力業務妨害容疑で逮捕された人もいる。逆に陽性を隠して社会生活を送っていたと分かったら、人間関係にヒビが入るかもしれない。
杉並方式の療養者の中には、東京都に対して「ホテルでちゃんと陰性確認してから出してほしい」と望む人が多いという。都のホテル療養が2週間で終わった後も、杉並区の自宅療養でなかなか陰性にならないからだ。それなら完全に陰性になってからホテルを出たいというのである。
それにしても、陽性のまま「治癒」とされたら、普通に社会生活を送っても、人に感染させる恐れはないのだろうか。