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「現状では分からないと言うしかない」

 厚労省は「WHOはウイルス量が減って自己増殖できるラインを下回る段階を踏まえて14日という日数を設定したと聞いています。ただ、本当に感染させないかというと、その証明はありません。現状では分からないと言うしかありません。(今後どうしていくかについては)PCR検査体制にゆとりができるかどうかで判断されるのではないでしょうか」と話す。

 都の担当者は「今のやり方で爆発的な広がりがなく、縮小傾向になっているのを見ると、もしかしたら大丈夫なのではないかと思います。そのあたりはこれからの検証になるでしょう」としている。

田中良・杉並区長

 杉並区の田中良区長は「PCR検査の陽性判定はウイルスの死骸を拾うなど精度に問題があると指摘する専門家もいます。ならば、陽性であっても感染はしないという証拠を示してほしい。それがない以上、現場を持っている区としては、陰性確認を続けざるを得ません。小池知事は記者会見で『東京都のPCR検査能力は1日に3000件あって、多い時は2000件の検査をしている。まだ1000件の検査を行うだけの余裕がある』と発言しています。余力があるなら、病院の退院者と同じように、ホテルや自宅の療養者も陰性確認してから療養解除とすべきではないでしょうか」と主張している。

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次の段階に進むための検証が必要だ

 陰性確認は、実は医療にとどまらない問題を含んでいる。コロナ禍に苛(さいな)まれる日本社会では、人々の心の分断が進み、感染者への誹謗中傷が激しさを増している。風評被害なども著しい。

 社会的対立をエスカレートさせないためにも、科学的な根拠に基づいた線引きとメッセージが求められる。

©AFLO

 現在行われている陰性確認なしの療養解除は、感染者急増という緊急事態の中で、やむを得ない選択として進められた。ウイルス流行の第一波が収まりかけ、政府の緊急事態宣言の解除が進んでいる今だからこそ、現状をとらえ直し、検証しておく必要があるのではないか。