文春オンライン

2020/05/19

「コロナ禍で営業していること自体、良い印象にはならない。匿名の取材といっても、販売店が絞られるから、お客様の身元もバレてしまう可能性も高い。この時期に取材を受けてくれる店はないよ」

 お店がナーバスになっている理由に合点がいった。取材に行き詰って落ち込んでいる私を見かねて、知人は慰めるように少しだけ情報を教えてくれた。

「こっそり別室で商談しているらしいよ」

「フェラーリはコロナ禍でも売れているのは確か。ただ、公に商談ができないので、こっそり別室でやっているらしいよ」

 5店舗目の取材が断られ、新たな情報があればと思い、すがる思いで、東北地方で自動車販売を手掛ける知人に連絡を入れた。

「そういえば、3月にフェラーリを買ったお客さんがいましたね」

 いきなりの情報ゲット! 

「だけど、私の店ではありません。知人のお店で売れました。たまたま購入したお客さんが、うちの常連客だったので、先日、会った時に『フェラーリ買っちゃったよ』と言っていたので、それで購入の事実を知ることになりました。本人のSNSにフェラーリの写真がアップされていたので、間違いないと思います」

フェラーリ・458イタリア。コロナ禍でも確かにフェラーリは売れていた。※写真は本文とは直接関係ありません ©iStock.com

 店舗名とお客様の名前、フェラーリの細かい車種名は明かせられないとのことだったので、匿名でもう少し話を聞いてみることにした。

「購入したのは不動産事業を営む50代の社長さんです。他にも輸入車を何台か持っているので、フェラーリは追加車両になります」

 コロナ禍でフェラーリを買った理由は?

「『ずっと前から欲しかった』って言ってました」

 えっ、それだけ? コロナ禍は気にならなかったのだろうか。

「気にしてないみたいです。そもそも気にしている人だったら、この時期にフェラーリなんて買いませんよ」

 知人の社長は笑いながら言った。

「そういうことをあまり気にしない人が、世の中のムードに流されず、『欲しいものを買う』という行動に出て、フェラーリを買っているんだと思いますよ」

 コロナ禍にフェラーリを買った人は確かにいた。

4月のフェラーリの販売台数は昨対比127%

 この原稿の執筆にとりかかった際、正確なデータが欲しいと思い、日本自動車販売協会連合会のホームページに掲載されている4月のブランド別の販売台数を調べた。予想通り、各自動車メーカーが激しく販売台数を落としていた。しかし、フェラーリは昨対比で126.8%と、驚異的に販売台数を伸ばしていることが分かった。