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10歳年下妻の「がん」に半年気付かず…言えなかった47歳夫の不安と“痛恨のミス”

2020/05/24

 10歳年下の妻が大腸がんになった。

 たとえ同い年でも、10歳年上でも、それまで普通に暮らしていた伴侶がなんの予告もなしに大病を患うのは、信じられないし、信じたくないはずだ。

 しかし振り返ってみると、前兆めいたものはたしかにあった。

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ノートパソコンが重くて耐えられなかった

 異変の第1段階は、息子が生まれて半年が過ぎた2018年の5月にやってきた。妻がとにかくグッタリするようになったのだ。朝起きて、子供の保育園の準備をして、登園させると、すぐさまグデ~と横になる。だが、その不調が大腸がんに繋がるなにかしらの前兆であったとは、つゆにも思わなかった。息子が夜泣きを繰り返す授乳期のアレコレで疲労困憊しているだけだと彼女も俺も信じていた。

 間もなく、ガクンと体力が落ちる第2段階が。ライターである彼女が取材から帰ってくると「カバンを持っていられなかった……」「ノートパソコンが重くて耐えられなかった……」「電車で立っていられなかった……」「なんだか坂道を登れなかった……」と当時35歳の彼女には似つかわしくない弱った台詞を口にする。それでも、産後の肥立ちが悪いだけなのかもと彼女も俺も信じていた。

妻(小泉なつみ・ライター)と子供が一緒に寝ているなんて微笑ましいが、彼女の状態はボロボロ。それでも写真を撮ってしまった。

息子がもらってきた風邪が、夫婦を迷わせた

 6月に入ると、発熱を繰り返す第3段階に。ただし俺も保育園に通い出した息子がもらってきた風邪がうつって発熱することが同月に3度もあり、これが夫婦をさらに迷わせた。この現象は子供が保育園に通い出した家庭では避けては通れないポピュラーなもので、そうした“幼児を抱える夫婦あるある”を経験中なのだろうと彼女も俺も信じていた。だが、俺は風邪をうつされても数日で収まるのだが、妻はなかなか収まらない。

※写真はイメージです ©iStock.com

 朝から昼にかけては微熱、その疲れが乗っかるのか夕方から夜にかけては高熱になるイヤ~な発熱が1週間くらい続くのだ。ただし、こちらも数日で収まるとはいえ、次は胃腸炎で吐き気、胃痛、腹痛、下痢に苦しまされ、落ちつくと新たな風邪で咳、喉の痛み、発熱とベルトコンベア状態で息子から病気をうつされていたので、常に調子が悪いのが当たり前みたいな夫婦共通の認識が出来上がっていた。また、まず息子から俺、次に俺から妻へという我が家固有のサイクルも常態化していて、長引くかどうかは別にして、俺が倒れた後に同じ症状で妻が倒れると「まぁ、いつものことだ」と妙な安心も得ていた。