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西条駅に到着。貨車の連結を外す作業へ

 15時19分。八本松の2つ先の駅、西条駅の3番線に到着。

 2002年までは八本松駅手前で列車を止めることなく、走りながら補機を解放するということも行われていた時代があったが、さすがにいまはちゃんと止まる。

西条駅での連結解放作業

 停車すると本務機から連絡が入った。

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「1056列車の補機さん。停車しました。どうぞ」

「1056補機、停車了解しました」

 駅のホームの詰所から一人の作業員が現れて、運転士が「停車オーライです」と伝えると我々の乗っている機関車と目の前の貨車の連結を外す作業に取り掛かる。

鉄道無線でほんの一言、人間味の感じられる会話

 運転台に女性の録音音声が流れる。

「列車選択スイッチ速度設定を確認してください」

「保安装置を確認してください」

 そしてわが機関車の運転士が本務機運転士に呼び掛ける。

「1056列車本務機さん。補機自連(自動連結器のこと)解除しました。お世話になりました」

「こちら1056列車本務機です。自連解除了解しました。どうもお世話になりました」

貨物列車と補機が切り離された

 あとで聞いたのだが、基本的に補機の運転士は、本務機の運転士が誰なのかを知らない。でも、同じ広島機関区の運転士であれば、無線を通した声で誰だか分かることがあるという。

 そんな時は通信の最後に、

「この先も気を付けて行ってきてください」

 と付け加えたり、相手が補機なら、

「気を付けてお帰り下さい」

 と返礼したりすることもあるという。

 本来、事実関係の指示や確認にのみ用いられる鉄道無線で、ほんの一言とはいえ、こうした人間味の感じられる会話がやりとりされていることを知り、何だかうれしくなる記者は、関係者から見ればやはり不審者だ。だからそんな思いは、口にしないでここに書く。

「ポウッ!」本務機とのお別れ

 わが機関車が少しバックする形で列車と離れる。この瞬間、わが機関車は第1056列車ではなくなった。

 

 ほどなく遠くで「ポウッ!」と汽笛が鳴ると、1056列車は出発し、見る見る遠ざかっていった。

 わが補機の運転士は、窓から顔を出し、連結解放をしてくれた作業員に「お世話になりました!」と声をかける。投球練習を終えてマウンドに向かう直前、帽子を取ってブルペンキャッチャーにお辞儀をする救援投手のようだ。

 我々4人は、機関車の中を歩いて反対側の運転台に移動した。

 さあ、あとは坂を下って帰るだけだ。

※この記事の取材は、2019年12月18日に行ったものです。

写真=長田昭二

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