日本との歴史をめぐる“犠牲者”であるはずの元慰安婦を長年にわたって利用し“食い物”にしてきた疑惑に、いま韓国社会は激怒している――。
韓国の元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)と、その前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏(55)をめぐる、募金・寄付金の不正流用などカネがらみの疑惑。連日メディアの批判にさらされ、韓国検察も捜査に動くなど、尹氏らは窮地に立たされているのだ。
それでも、現地で取材していると、神聖化されている「慰安婦問題」に大きな影響はないように思える。現地事情を解説していきたい。
絶体絶命の尹氏と正義連
「集会へ参加した学生が出した募金はどこに使われるか分からない」
「30年間、だまされるだけだまされ、利用されるだけ利用されてきた」
一連の疑惑は、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さん(91)が5月7日の記者会見で、このように尹氏を批判したことが発端。その後、正義連と尹氏をめぐる疑惑が次々と浮上した。
不明朗な飲食費の会計記録、亡くなった元慰安婦による奨学金の正義連幹部の子弟らへの優先支給、元慰安婦のための施設の売買……これらの疑惑が事実なら、「正義」や「人権」を前面に出して元慰安婦を救う立場だった尹氏が、実は元慰安婦の老女を使って、市民の善意を懐に入れていたことになる。ましてや尹氏は、慰安婦問題のキャリアを活かして4月の総選挙で当選。間もなく与党「共に民主党」の国会議員となる立場なのだ。
そんな尹氏の“闘争”の舞台になっていたのが、毎週水曜日にソウルの日本大使館前で慰安婦像を囲んで行われている日本への抗議集会だ。李さんの“暴露”後も、5月13日に1439回目、20日には1440回目の集会が開かれた。
集会では、正義連理事長が元慰安婦や支援者に対し「申し訳ない」と謝罪したものの、慰安婦問題は「戦争犯罪」「戦時の性暴力」であると主張。「普遍的な人権問題化に寄与した運動の歴史と大義を崩壊させてはならない」と強調した。