有名慰安婦団体・挺対協(現・正義記憶連帯)の前代表・尹美香(ユン・ミヒャン)氏の国政転身をきっかけに、挺対協をめぐる疑惑が噴出している。
「週刊文春」では2019年に『韓国人、韓国を叱る』著者・赤石晋一郎氏による挺対協への慰安婦たちの告発を報じる記事を掲載した。その記事を再公開する(初出:2019年1月3日・10日号。肩書き、日付、年齢などは当時のまま)。
「最終的かつ不可逆的な解決」で一致したはずの日韓合意から3年。またも韓国は“ゴールポスト”を動かした。だがその陰で、嘆きの声を上げている人がいる。90代になる当の慰安婦たちだ。現地徹底取材と日本初公開の裁判資料から見えた慰安婦問題の深層――。
被害者たちを食い物にしている市民団体
私の手元に元慰安婦の女性、沈美子(シンミジヤ)が日本人の支援者に宛てた手紙がある。
〈挺対協は慰安婦のために募金をしています。しかしそのお金の全てを挺対協は横取りしている。強盗と同じです。被害者のハルモニ(お婆さん)たちを食い物にしているのです(略)挺対協はお金がどれだけ入っているのか、ハルモニの前で明らかにすべきです〉
「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協=現・日本軍性奴隷制問題解決の為の正義記憶連帯)」は、慰安婦への支援を目的に掲げる市民団体。毎週水曜に在韓日本大使館前で行われる“水曜デモ”を主催し、時の政権にも絶大な発言力を持ってきた。なぜその挺対協を、元慰安婦が「食い物にしている」と痛烈に批判しているのか。
沈美子は元慰安婦のリーダー的な役割を果たしてきた存在だ。2008年に84歳で亡くなったが、かねてから慰安婦問題を取材してきた私は今回、彼女の関係者を訪ね歩き、様々な資料を入手した。そこに記されていたのは、韓国人も知らない慰安婦問題の“不都合な真実”だった――。
2015年・首脳会談の最大のテーマは「慰安婦問題の解決」
「俺と萩生田でリャンハン上がりだから大丈夫だよ」
2015年11月、寒風が吹き付けるソウル。朴槿恵大統領との日韓首脳会談に臨むために青瓦台を訪れた安倍晋三首相は萩生田光一官房副長官(当時)にこう笑いかけたという。リャンハンとは麻雀用語で「二役」の意味。安倍と萩生田、韓国内で日本の二大右派政治家と目されていた二人を喩えたジョークだった。首脳会談の最大のテーマは慰安婦問題の解決にあった。
萩生田が振り返る。
「秘書官からは『外務省が“卵をぶつけられる可能性がある”と言ってます』と報告があり、緊迫感があっただけに総理の言葉で少し和んだ。会談前から総理は『自分の時代で終止符を打つ』と強い決意を持っていて、朴槿恵大統領も『自分の責任で慰安婦問題を解決する』と前向きだった。日本側としては慰安婦問題を解決すると共に、オブラートに包む形でソウルの日本大使館前の少女像を撤去させることを韓国に認めさせることを目指していた」