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韓国の元慰安婦リーダーから届いた手紙「被害者たちは食い物にされている」

韓国の元慰安婦リーダーから届いた手紙「被害者たちは食い物にされている」

韓国人も知らない慰安婦問題の“不都合な真実”

2020/05/20
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黙殺される慰安婦たちの想い

 沈美子の作成した準備書面からは、水曜デモへの強烈な不信感が読み取れる。

〈日本軍慰安婦または女子勤労挺身隊ではない偽物を動員し、ソウル日本大使館の前や周辺で次のような内容や表現を提唱したり、流布する行為を禁ずる。

一.日本軍慰安婦に対するアジア女性基金は欺瞞だ。日本のカネを受領するのは公娼を認めることだ。

二.その他、被告が日本軍慰安婦の利益を代弁するという趣旨の内容〉
(要約)

 当時、日本は1995年に設立された「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を通じ、慰安婦問題の解決を目指していた。償い金の支給や、歴代首相の手紙を元慰安婦に渡す活動に取り組んできたアジア女性基金だが、挺対協やナヌムの家から激しいバッシングを受けていた。

 まさに日韓合意後に韓国で起きたのと同じような現象が、当時も起きていたのだ。だが沈美子らはアジア女性基金の役割を認め、その一方で挺対協に対し、慰安婦の支援者などではないとノーを突きつけた。

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 ところが――。

「裁判所では『日本に対する運動であり、違反に当たらない』と申請は棄却されました。いわゆる“反日無罪”。沈美子が高齢だったこともあり、やがて会もバラバラになり、元慰安婦達の声は急激にトーンダウンしてしまった。この裁判のことは韓国でもほとんど知られていません」(同前)

 結局、日本のアジア女性基金も2007年に解散を余儀なくされる。基金の元幹部、故・大沼保昭は生前、「自分が慰安婦問題についてやったことは日韓関係改善に役立たなかった」と絶望を口にしたこともあった。

本人の許可を取らずに実名が刻まれていた記念碑

 挺対協にとって慰安婦とは何なのか。こんなエピソードがある。

 挺対協には代表の尹美香を筆頭に、梨花女子大出身者が数多くいる。梨花女子大は韓国屈指の名門女子大だ。ある人物が挺対協幹部に「梨花女子大にも慰安婦になった女性の資料が埋もれているかもしれない」と提案したところ、「梨花女子大にはそんな人はいません!」と言下に否定されたという。運動家は潜在的に元慰安婦を見下している面があるのではないか。だから元慰安婦を利用し、犠牲にすることも厭わない。

市民団体「正義記憶連帯」理事長・尹美香氏 ©時事通信社

 2016年8月29日に旧韓国統監邸跡地にオープンした慰安婦追慕公園。公園内にはソウル市と挺対協、ナヌムの家が協議し、「日本軍慰安婦記憶の場」に記念碑が設置された。現ソウル市長の朴元淳(パクウオンスン)は、2000年に開かれた「女性国際戦犯法廷(民衆法廷)」で、韓国代表検事として昭和天皇を起訴した人物。挺対協とは“同志”と言える関係だ。