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2020/05/20

〈(金学順は)日本の基金は受け取るな、と遺言した〉

 墓碑の裏面にはこう刻まれていた。この言葉は真実なのか。金学順の知人はこう見解を話す。

「金学順は慰安婦問題の象徴的な女性となっているが、名乗り出た背景には恋人だった日本兵に再会できるんじゃないかという淡い気持ちもあったそうです。亡くなる前も『日本のお金で元慰安婦が住める施設を作りたい』と話していた。墓碑の遺言は無理やり言わされたか、もしくは後に創作されたものではないか」

 元慰安婦の一人ひとりに悲しい歴史があり、それに対する正確な検証と真摯な反省は必要だ。だが運動家が事実を歪め続ければ、正しい検証や反省をする機会は潰えてしまう。

 挺対協に沈美子裁判などについて取材を申し込んだが、「日本メディアの取材は受けません。質問についても確認することはできません」という回答だった。

被害者を無視した運動に何の意味があるのか

 12月12日に行われた水曜デモ。日本大使館の前で、若い女性運動家が「安倍は謝罪しろ」とシュプレヒコールを上げていた。5万ウォンを寄付する支援者の姿も見える。ゲストで登壇したマイク・ホンダ元米下院議員はガムをかみ続け、笑みを浮かべていた。

 被害者は元慰安婦だ。彼女らを無視した運動に何の意味があるのか。私はぼんやりそう考えながら、沈美子の言葉に思いを馳せた。彼女は〈遺言〉として残した書簡でこうも訴えていた。

〈解決に向けて日本も努力しているのに、水曜デモはハルモニを利用して日韓関係を悪くしようとしている悪い行いだ。それは慰安婦の立場を落とすことでもあり、国際的にも恥ずかしい行為だから止めるべきだ〉

有名な元慰安婦・李容洙(イ・ヨンス)氏(中央)。尹美香氏(右)と腕を組んでいる ©️getty

 反日活動という終わりなき闘いに“従軍”させられている元慰安婦。彼女たちの「真の声」に耳を傾けない限り、この問題が解決する日は来ないだろう。

(文中一部敬称略)

あかいししんいちろう 1970年生まれ。南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。「フライデー」記者を経て、06年から「週刊文春」記者。政治や事件、日韓関係、人物ルポなどの取材・執筆を行ってきた。本記事を最後に、19年1月よりジャーナリストとして独立

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