「なぜ彼女なのか。みな『気分が暗くなる』と嘆いています」

 こう語るのはある韓国・太平洋戦争遺族会のメンバーだ。いま日韓関係に再び暗雲が立ちこめ始めようとしているーー。

 きっかけは一本のニュースだった。3月24日、聯合ニュースがこう報じたのだ。

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〈慰安婦支援団体の理事長 与党陣営の比例代表候補に=韓国総選挙〉

 文在寅政権の命運を握ると言われている韓国総選挙。もし与党が敗北するようなことがあれば「文政権は死に体になる」(ソウル特派員)という観測が流れるなか、与党陣営から、あの“反日”団体のトップが出馬することが決まったのだ。

市民団体「正義記憶連帯」理事長・尹美香氏 ©時事通信社

歴史問題と韓国政治がついに一体化

 以下、記事を引用しよう。

〈4月15日に実施される韓国の総選挙に向け、与党「共に民主党」が参加する与党陣営の連合比例政党「共に市民党」は23日、比例代表候補34人の名簿と順位を発表した。候補には旧日本軍の慰安婦問題の解決を求め、ソウルの日本大使館で毎週「水曜集会」を開いている市民団体「正義記憶連帯」の尹美香(ユン・ミヒャン)理事長(順位7位)が含まれた。共に市民党は総選挙で約17議席を獲得するとみられている〉

 市民団体「正義記憶連帯」(正式名称・日本軍性奴隷問題解決の為の正義記憶連帯)とは旧・韓国挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協)のことだ。慰安婦支援団体であると同時に、在ソウル日本大使館前で毎週水曜集会を主催している“反日”団体としても知られている。

 尹美香氏は同団体の女性代表で、慰安婦問題では韓国内で最も影響力があるとされる人物である。

韓国人、韓国を叱る: 日韓歴史問題の新証言者たち (小学館新書)

 聯合ニュースの予測でも総選挙では17議席あまりを獲得すると見込まれており、名簿順位7位の尹美香氏の当選はほぼ確実のようにも見える。

 このことは歴史問題と韓国政治がついに一体化するということを表しているといえよう。

 私はこれまでの取材のなかで、旧・挺対協は「慰安婦を利用している」という声を多く聞いてきた。また尹美香氏の経歴には、いくつもの疑問符が投げかけられてきたのも事実だ。