文在寅の大統領就任をキッカケに再燃した慰安婦問題
約1カ月後の12月28日、日韓両政府は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認する日韓合意を発表した。日本政府が10億円を拠出し、韓国側が運営する形の「和解・癒やし財団」を設立。元慰安婦には1億ウォン(約1千万円)、遺族には2千万ウォン(約200万円)が支給されることになった。
「両国外相による日韓合意の会見は韓国でも生放送されました。安倍政権は謝罪しないと思い込んでいた韓国のアナウンサーは、岸田文雄外相の『責任を痛感する』という謝罪の言葉を聞いて絶句した。少女像の移設も『努力する』という文言となり、韓国政府は内諾していました。韓国でもこの合意は歴史的成果になると期待が高まっていったのです」(ソウル特派員)
それから3年。「不可逆的な解決」を成したはずだった慰安婦問題が再燃している。キッカケは左派で市民団体に支えられた文在寅の大統領就任だった。
「財団への風向きが一気に強くなりました。理事長だった金兌玄(キムテヒヨン)は反対派の男性から催涙スプレーを噴射され、息子が脅迫を受けるなど散々な目に遭った末、昨年7月に辞任している。彼女は精神的ショックで外出が出来ない状態と聞きます。財団の理事は当初11人いましたが、民間出身の理事は全員辞任しました」(韓国人ジャーナリスト)
多くのハルモニは“運動圏”の外にいる
雨の中、抗議デモに参加した元慰安婦が体調を崩したと報道されると、癒やし財団はますます窮地に追い込まれていく。結局、文在寅政権は合意の再検証を始め、2017年末に「被害者の声が十分に反映されなかった」との見解を発表。11月に財団の解散も発表し、日韓合意は事実上“破棄”されたのだった。だが――。
「財団の10億円は日本国民の税金から出たお金。日本国民にも感謝します」
そう語るのは、90代の元慰安婦、金紅玉(仮名)。匿名を絶対条件に私の取材に応じた彼女が続ける。
「朴槿恵は母のような気持ちで、ハルモニのために頑張って日韓合意を実現してくれた。有難く思っています。挺対協やナヌムの家は『お金を受け取るな』と言いますが、言うことを聞くハルモニは少ない。なぜなら多くのハルモニは“運動圏”の外にいる。だからお金を受け取ったのです」
別の元慰安婦もこう証言する。
「癒やし財団のお金が配られる前に、挺対協の尹美香(ユンミヒヤン)代表が元慰安婦を集めて、『日本のお金を受け取ってはいけない』と演説をぶっていたことがありました」
挺対協だけではない。元慰安婦とボランティアが共同生活する施設「ナヌムの家」。そのナヌムの家の所長も「待てば倍のお金が出る。財団のお金は受け取らないように」と元慰安婦に圧力をかけている。
だが、多くが90歳前後の高齢となった元慰安婦の想いは違っていた。合意時点で生存していた47人のうち、34人が支給金を受け取ったのだ。
「元慰安婦の方々の多くは財団の活動に賛成、少なくとも反対ではなかったと考えることができる。ナヌムの家だけで見ても、同所に暮らす元慰安婦10人のうち6人が支給金を受け取っています。にもかかわらず、慰安婦の意に反しているとして財団は解散させられるのです」(別のソウル特派員)