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尹美香“銭ゲバ”疑惑が続出しても、韓国が「反日慰安婦カード」を絶対に手放せないワケ

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 だが、現場に足を運んで様子を見ていると、気勢を上げてはみたものの、疑惑の渦中だけにバツの悪さは否めなかった。もちろん尹氏本人は会場に現れなかった。

 5月25日には李容洙さんが、大邱市内のホテルで2回目の記者会見を開き、次々に疑惑が明らかになっている状況について「考えてもいなかった内容が出てきた。罪を問われ、罰を受けるべきだ」「私利私欲を満たして勝手に国会議員に出馬した」と痛烈に批判。李さんは、この日の会見に尹美香氏も一緒に立ち会うように働きかけていたが、やはり会場には現れなかった。

示しめしがつかない文在寅政権

 今回、尹氏と正義連のほか、元慰安婦が共同生活する施設「ナヌムの家」でも寄付金の使途をめぐる疑惑が職員によって暴露された。

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 ここに来て、一連の疑惑に左派系紙「ハンギョレ」や京郷新聞までもが参戦。「大きな失望を抱かせた」「真相を明らかにせよ」などと叱責している。

 尹氏所属の系列政党「共に市民党」を併合した与党「共に民主党」も、当初は尹氏をかばっていたが、いまでは指導部も事態に対処せざるを得なくなっている。

「尹氏の疑惑を真剣に受け止める国民は一層増えている。捜査結果を待たず、迅速に真相を把握し適切な判断と行動をすべきだ」(金海永・最高委員)

「国民の怒りは臨界点に達した。党は速やかに実態と真相を正確に把握すべきだ」(盧雄来・議員)

 党内からは、こんな声が聞かれる。元慰安婦を騙した疑いのある人物を議員としては迎えられない。世論の大バッシングを受ける人物は「迷惑」というわけだ。

疑惑発覚後に開かれた水曜集会には多くの若者の姿がみられた(2020年5月20日) ©AFLO

 一方、韓国大統領府は、「党の問題」として、疑惑とは距離を置いている。

 ただ、文在寅大統領は就任後、元慰安婦を交えて尹氏と会っている。さらに、尹氏が元慰安婦に、2015年の日韓合意に基づく日本からの拠出金を受け取らないよう圧力をかけた疑惑も持ち上がっている。

 元慰安婦を利用し私欲を満たしてきた人物にとって、日韓合意で慰安婦問題が解決してしまっては死活問題。それに反対するのは“自然”なことだろう。そんな尹氏の意向に影響され、文在寅大統領は日韓合意を反故にしたのではないかとの疑念も燻る。少なくとも、尹氏が慰安婦問題をこじらせ複雑にさせたことは想像に難くない。

 普通に考えれば、日本に対しても決まりの悪さを感じて当然だ。実際に、そう恥じ入る韓国市民はいる。

 日本政府は、尹氏と正義連などの疑惑に対して、特にコメントはしていない。韓国の国内問題であり、日本政府としては2015年の日韓合意で慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決」したとの立場だ。