過去に文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。インタビュー部門の第4位は、こちら!(初公開日 2019年4月26日)。

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「藤井そうたったのか……」

 これは2017年1月26日に行われた棋王戦予選、藤井聡太四段(当時)と豊川孝弘七段の対局後、豊川七段がつぶやいたとされる「ギャグ」だ。ただ、この話になると、豊川七段は、悔しそうな気持ちをにじませたのである――。

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2016年度から関西本部に所属している豊川孝弘七段

往復ビンタどころじゃないですよね

 前回の豊川孝弘七段のインタビューでは、ギャグなど楽しい一面にフォーカスしたが、今回は、戦いに懸ける想いなど、現役棋士としての一面にスポットを当てていきたい。

 豊川七段と、藤井七段は、これまで3度の対局がある。

(1)2017年1月26日 棋王戦予選 ……藤井聡太2度目の公式戦
(2)2017年12月28日 王座戦予選 ……藤井聡太55回目の公式戦
(3)2018年7月3日 C級1組2回戦 ……藤井聡太81回目の公式戦

 そして、すべての対局に勝利したのは、藤井聡太七段だった。

「往復ビンタどころじゃないですよね。トリプルビンタ……」と漏らす豊川七段に対局を振り返ってもらった。

負けてこっちも悔しいじゃないですか

――藤井聡太七段との感想戦のとき、豊川七段が「藤井そうたったのか……」とつぶやいたのが、話題になりましたね。

豊川 これは1度目の対局のときですね。負けてこっちも悔しいじゃないですか。中継も入っていたので記者もいるでしょ。参っちゃったなと思って「藤井そうたったのか……」って。何の意味もないですけどね。無理やり。そしたら中継サイトで書いてくれたんですけど、でも全然です。全然。

 最初の対局は、藤井くんにとって2度目の公式戦でしたね。すごく注目された加藤先生(一二三九段)との公式戦初対局にくらべれば、それほど注目されていたわけでもありませんでした。とはいえ、こちらも勝ちたいじゃないですか。それで関西の奨励会員に「彼はどんな将棋を指すの?」と聞いてみたんです。

「普段の感想戦でオヤジギャグ? それは言いませんよ」

――どんな将棋だと?

豊川 その子はね「おっさんみたいな将棋。受け将棋」って言っていましたね。でも、それほど受けという印象でもなかったので、奨励会時代とはだいぶ変わったんでしょう。

――2度目の対局は、同じ年の12月28日の王座戦予選。夏には連勝が29で止まるものの、そのあとも引き続き高い勝率でした。

豊川 王座戦のときは、最初にくらべてずいぶん強くなっていましたね。僕も興味があって、藤井くんの将棋は全部並べていたんですよ。

――研究してみると、藤井聡太七段の強さは、どういうところにあると感じましたか?

豊川 寄せです。終盤ですね。ただ終盤力は中盤力につながっていますから、どこから寄せを見るかという構想力が高いんですね。この中盤にいちばん個性が出ますからね。