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 その後、起訴状朗読となった際、検察官は被害者名について、17歳の少女だけでなく41歳の女性についても「社会の影響を考えると、氏名朗読は控えさせていただきたい」と訴え、「氏名朗読自体が被害者の負担となる」と主張した。しかし裁判長は17歳少女に関しては「とくに異論はない」としたものの、41歳女性については「被害者名等すべて朗読するように」と訴えを退けた。

 起訴状を検察官が読み上げるなか、松永は鼻の下や額の汗を拭うなど落ち着きのない様子だったが、緒方は両手をひざの上で組み、体を動かすことはほとんどなかった。

弁護側は罪状認否留保を主張

 続いて罪状認否に入る直前に、弁護側から証拠開示がまったくなされていないとの指摘が上がる。それに対して検察側は、現在までは第一事件(17歳少女の事件)に関してのみで、第二事件(41歳女性の事件)については、両被告を同女に対する詐欺、強盗容疑で再逮捕しており、捜査中のため証拠開示できなかったとし、「6月上旬から中旬までには開示します」と説明した。

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 その発言を受けて弁護側は言う。

「第一事件では起訴状で(少女の父親殺害を窺わせる)余計な記述がある。そのため罪状認否は留保したい。第二事件の被害者の調書は見ていない。それを見たうえで最終的な認否を行いたい」

 第一事件の起訴状には、まだ事件化されていない清美さんの父・広田由紀夫さん(仮名)が殺害されたことに触れた、〈あんたがお父さんを殺した〉や〈今度逃げたらお父さんのところに連れていく〉との文言が含まれていた。そのことを理由に、弁護側はこの場での認否を留保したのである。

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 裁判長から認否の留保について問われ、松永は「はい」と声を上げ、緒方は黙って頷いた。

松永は弁護団に向かって表情を変えずに一礼

 そこで裁判長は、次回の第2回公判は7月31日の午後3時から4時半までの予定で、今日と同じ第204号法廷で行われることを確認すると、閉廷を告げた。時間にしてわずか24分の、短い公判だった。

 退廷時、松永は弁護団に向かって表情を変えずに一礼して無言で出ていった。一方、緒方は歩み寄った2人の弁護士に笑顔で対応し、一言二言なにかを話して姿を消した。それは法廷で見せた彼女の唯一の笑顔だった。

 初公判から4日後の6月7日、福岡地検小倉支部は松永と緒方を、原武裕子さんに対する詐欺・強盗罪で起訴した。公訴事実は以下の通りである。

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