2002年5月6日、『読売新聞』(西部本社版)が“独自”の記事を掲載した。

〈少女監禁被告のマンションを父親死亡現場と断定…福岡県警〉との見出しが付けられたその記事は、捜査本部が北九州市小倉北区の『片野マンション』(仮名)を、少女・広田清美さん(仮名)の父・広田由紀夫さん(仮名)が死亡した現場だと断定。現場保存を図るために借り上げていることが5日にわかったというものだ。

『読売新聞』2002年5月6日付朝刊より

記事には注目すべき記述が

 同記事では〈賃貸という異例の措置〉との前置きをしたうえで、次のように解説する。

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〈〔1〕捜索差押許可状の有効期間(原則として7日)は立入禁止措置で現場保存できるが、捜査には長期間を要する〔2〕許可状の有効期間経過後、賃貸に出された場合、新たな入居者によって現場が変更され、貴重な証拠資料が失われる恐れがある――などを考慮、事件の立件に向け、家賃を支払うことにした。家賃は月額6万5000円で、「捜査活動費」の名目で支出されている〉

 このことは、由紀夫さんの死亡について、捜査本部が積極的に捜査していることを示している。だが、私が注目したのは同記事内にあるこのような記述だった。

〈また、少女は、緒方被告の父親(65)、母親(63)、妹(37)、妹の夫(43)らもこの一室で暮らしていたことがあると話しており、「母親はある日、口から何かを吐いて倒れ、そのまま動かなくなった」とも証言している〉

「おばあさんもいなくなった」

 じつは緒方の母の死については、3月のうちに『週刊文春』だけが報じていた。それは以下の内容である。

〈少女の事情聴取は現在、婦人警官が保護先の児童相談所で行っているが、落ちつきを取戻しつつあるA子さん(少女)は、実は「第二の殺人」についても証言を始めている。

「お父さんの他にも、もう一人殺されている」

 供述によると、少女が小学生の頃、「モリ(緒方)のお母さん」と二人に紹介されたおばあさんとある時期、一緒に××号室で暮しており、「おばあさんも殺され、いなくなった」という〉(『週刊文春』2002年3月28日号)

『週刊文春』2002年3月28日号より ©︎文藝春秋

 だが、その衝撃的な内容についての続報はなく、複数の福岡県警担当記者に話を聞いても、捜査員からの有力な情報はないとして、いつしか立ち消えになっていた。

 そこにまた改めて緒方の母の死をうかがわせる記事が出てきたのである。さらに同じ日の読売紙面には〈緒方被告の親族6人が多額の借金抱え不明〉との見出しがついた記事も掲載されており、緒方の親族6人が少なくとも3年間にわたって消息を絶っていることに触れている。それは先の記事での母の死が、氷山の一角に過ぎないことを意味していた。