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原武裕子さんに対する詐欺・強盗罪の公訴事実

〈被告人両名は

 第1(*詐欺罪) 事実上夫婦同然の関係にあったものであるが、原武裕子(当時35年)から婚姻名下に金員を詐取しようと企て、共謀の上、被告人松永が、平成7年8月ころから、福岡県北九州市内において、同女に対し、村上博幸と称する独身者で、京都大学を卒業し、今は××塾(予備校名)の講師として月収は100万円であるが、将来は学者や小説家も目指しているなどと、その氏名及び経歴等を詐称し、同8年1月ころには、同市内において、真実は婚姻する意思がないのにあるかのように装い、同女に対し、「結婚して下さい。一緒に住もう。子供さんの面倒はきちんと見ますから。」などと申し向けて婚姻を申し込み、同女をして同被告人との婚姻を決意させて交際を続け、同年7月20日ころには、同市内において、同女に対し、被告人緒方を同松永の実姉である「森田」と偽って同女に引き合わせた上

 1 同月(7月)29日ころ、同市小倉南区××所在の飲食店××(店名)店内において、被告人松永が、同女に対し、複数の消費者金融会社の名前等を記載したメモを示しながら、「自分は、小説家としてやっていくつもりだ。一緒に住む家を探したり、当面、一緒に生活していくためのお金が必要だから用立ててほしいんだけど。こういうところがあるんだけど。借りて来てほしいんだけど。」などと、さらに、被告人緒方が、同女に対し、「全部、弟に任せとったらええんよ。」などとこもごも言葉巧みに嘘を言い、同女に婚姻生活に必要な資金名目で現金を提供するよう要請し、同女をして同資金は真実被告人松永との婚姻生活に必要な資金であると誤信させ、よって、同月30日ころ、同市小倉北区××所在の××室(公共施設名)において、被告人緒方が、同女から現金150万円の交付を受け

 2 同年(平成8年)9月13日ころ、同市小倉北区内において、被告人松永が、同女をして同被告人との婚姻生活を営む新居として同市小倉南区××所在の××(アパート名)20×号室の賃借りを申し込ませた上、同月23日ころ、上記××(店名)店内において、被告人松永が、同女に対し、「小説家としてやっていくので当面の生活資金が足りない。まだお金がいるので借りてくれないか。」などと言葉巧みに嘘を言い、同女を更に誤信させ、よって、同月24日ころ、上記××(店名)店内において、被告人両名が、同女から現金110万円の交付を受け

 もって、人を欺いて財物を交付させ

 第2(*強盗罪) 同年(平成8年)10月22日ころから、前記××(アパート名)20×号室において、原武裕子及びその二女(当時3歳)らと同居するようになったものであるが、共謀の上、上記女性から金員を強取しようと企て、電気コードの電線に装着した金属製クリップで同女の身体を挟み、差込プラグをコンセントに差し込んで通電させ、激しい電気ショックの状態を起こさせるなどの暴行を繰り返し、また、時には上記3歳の二女に対し前同様に通電させ、あるいは、通電する旨上記女性に告げるなどして恐怖感を増大させ、さらに、別表記載のとおり、同年12月29日ころから同9年3月10日ころまでの間、前後7回にわたり、同所において、同女に対し、前同様に同女の身体に通電させ、あるいは、身体に通電する旨予告するなどの暴行・脅迫を加え、その都度、被告人松永が、同表記載のように、「母親から70万円の金を引き出せ。パソコンを買うお金がいるから貸して欲しいと言え。」などと同女に命令し、その反抗を抑圧して金を要求し、よって、同8年12月30日ころから同9年3月10日ころまでの間、前後7回にわたり、同室ほか4か所において、同女が上記命令に従って調達した現金合計198万9000円を同女から強取したものである。

 罪名及び罰条

 第1 詐欺 刑法第246条第1項、第60条

 第2 強盗 刑法第236条第1項、第60条〉

※写真はイメージ ©iStock.com

通電は3歳の娘にも及んでいた

 この起訴状の文面から、1995年(平成7年)8月に松永が裕子さんに対して、身分を京都大学出身の塾講師と偽って近づいたことがわかる。その後、緒方を姉と紹介して裕子さんの恋心を利用し、出会いから1年後の96年7月末からカネを騙し取るようになっていた。同年10月には同棲を開始。その1週間後にはすでに通電を伴った暴力を振るっている。通電が彼女にとどまらず、3歳の娘にも及んでいたとの記述が痛ましい。

 こうした松永と緒方の暴力による支配が、裕子さんがアパートから逃げ出す1997年3月までの間、約4カ月半にわたって続いていたのである。