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 それは作品の力でもあるのかもしれない。『最高の離婚』は、今回の『Living』と同じく坂元裕二の作品だ。瑛太によれば、《坂元さんの書くセリフは、なぜここに句読点があるのか、そんな細部までしっくりくるんですよ》というだけに(※6)、よけい役にハマってしまうのではないか。

2013年1月~3月に放送された『最高の離婚』

 坂元との仕事では『最高の離婚』以前にも、『それでも、生きてゆく』(フジテレビ系、2011年)に主演し、妹を殺された重い過去を背負った青年を演じている。劇中の彼は妹を亡くしたのち母と弟と別れ、一緒に暮らし続けた父親も病死する。じつはこのとき、瑛太自身も現実に父親が急死した直後だった。同じく肉親の突然の死を経験した人物を演じる心中はいかばかりであっただろうか。坂元作品ではその後も、一昨年放送の広瀬すず主演のドラマ『anone』(日本テレビ系)にも謎めいた男の役で登場している。

2011年7月~9月に放送された『それでも、生きてゆく』

 絢斗もまた、坂元の脚本によるドラマ『モザイクジャパン』(WOWOW、2014年)で主演を務めている。同作では、絢斗演じる証券マンがリストラされ、地方の小さな町に帰郷するのだが、疲弊した町はアダルト産業に再起を賭けるようになっており、彼も否応なしにその世界に巻き込まれていく。数年後に浮上したAV出演強要問題などを先取りしたような部分もある意欲作であった。

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2014年にWOWOWで放送された『モザイクジャパン』

瑛太と絢斗、似ているところはあるか?

 瑛太のこれまでの出演作を振り返ると、『最高の離婚』では妻から離婚を突きつけられる夫、あるいは映画『リングサイド・ストーリー』(2017年)では売れない役者といった具合に、その役柄には卑屈さや愚かさといった、人間の負の側面を強く印象づけるものが少なくない。ただ、『リングサイド・ストーリー』で演じたいかにもダメ男な俳優について、彼自身はけっしてダメだとは思っておらず、むしろ自分より勇気があると肯定してみせた(※6)。別のインタビューでは、《ひとつの役柄に対して、いかに多面性を出せるかということですね、考えているのは。こいつは何なんだろうって観ている人が思うような芝居を、どこかで意識しているのかもしれません》と、役づくりで大切にしていることを語っていた(※2)。