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朝ドラの名場面、ふんどしで撮影した絢斗

 弟の絢斗も、2010年に初主演した映画『ソフトボーイ』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、しだいに頭角を現す。2016~17年にはNHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』にヒロインの夫役で出演し、広く知られるようになった。『べっぴんさん』のなかでも彼が格別の思い入れがあるというのが、夫が戦後、抑留されていたシベリアから帰国し、妻と再会を果たすシーンだ。このとき、衣装スタッフには、自分の着る軍服を少し破ったりシャツのボタンを壊したりしてほしいと指示したという。さらに、画面には映らないにもかかわらず、ふんどしを締めて撮影にのぞんだ。これについて彼は放送後、《たとえ画面に映らなくても、演じる上での自分自身の気持ちが全然違う。そうやって衣装の力を借りないと演じられないと思うほど、大切にしたいシーンだったんです》と語っている(※3)。

 役になりきる努力は瑛太も変わらない。一昨年の大河ドラマ『西郷どん』では、鈴木亮平演じる西郷隆盛の盟友で、のちには対立することになった大久保利通を演じた。作品によって現場にいるときのスタンスが変わるという彼は、同作では1人でいることが多かったという。当時のインタビューでは次のように明かしていた。

《スタジオを出たところに、前室と呼ばれるスペースがあって、出演者やスタッフの皆さんが集まっていることが多いのですが、僕はほとんどそこにいませんでした。自分の控え室にこもって、出番が来たらスイッチを入れるという日々――。“絶対に一人でいよう”と意識したわけではないのですが、大久保という常に孤独感を抱いている役に向き合っているうちに、自然とそうなっていきました》(※4)

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こちらは2003年のフジテレビ系ドラマ「ウォーターボーイズ」の貴重な一枚。20歳だった瑛太は左から2番目。そのほか、石井智也、主演の山田孝之、森山未來、石垣佑磨(左から)

『最高の離婚』『それでも、生きてゆく』……ヒットメーカー・坂本裕二との縁

 これを読むと、俳優のなかでもいわゆる憑依型なのかと思わせる。あるインタビューで同席した松田龍平からも「憑依型ですか?」と訊かれたが、本人は《そんなことはないよ(笑)》ときっぱり否定している(※5)。ただ、松田と共演した映画『まほろ駅前狂騒曲』(2014年)の衣装合わせの際には、同時期に撮影していたドラマ『最高の離婚』(フジテレビ系、2013年)の役になっていると監督から指摘されたという。本人は《基本的に、日常の中で自分が変わってしまうようなことはないと思っているんだけど》と言うが(※5)、ときには無意識のうちに役をひきずってしまうこともあるのだろう。

『まほろ駅前狂騒曲』で共演した松田龍平(左)と瑛太 ©文藝春秋